記録的な猛暑を受け、各企業が従業員の暑さ対策を強化している。保冷剤や塩飴などの暑熱対策グッズの支給や空調服の貸与に加え、従業員の健康を確保して業務への影響を抑えるため、職場環境や働き方を見直す動きもみられる。企業に従業員の熱中症対策が義務付けられたことも後押しとなり、暑さへの備えを個人任せにせず、企業が主体的に取り組む流れが鮮明になっている。
猛暑が企業経営に影響、半数が支障を報告
日本生命保険の担当者は「暑さによる疲労の蓄積や睡眠不足は、生産性や業務パフォーマンスに影響を及ぼす」と述べ、猛暑への警戒感を示す。同社では従業員の健康保持・増進を重要な経営課題の一つと位置付け、熱中症対策を含めた健康管理を進めている。
帝国データバンクが今年7月に1194社から有効回答を得た調査では、顕著な高温を記録した日に業務や事業活動について「何らかの支障が出た」とした企業は50.0%に上り、猛暑が企業経営にも影響している実態が浮き彫りとなった。業界別では屋外での作業が多い「建設」や「農林・水産」の割合が高かった。
具体的な対策、水分補給品の支給が最多
最近1~2年以内の暑さ対策の強化については、87.8%が実施・検討していた。具体的には「水分・塩分補給品の支給」が最多の61.2%で、次いで「空調設備や遮熱シート、扇風機の使用・増設」(47.8%)が多かった(複数回答)。
JR西日本では駅係員や乗務員を対象に、5~10月は駅改札やホーム、列車内、乗務員室などで制帽の着用を省略できるようにしている。今年9月からは乗客に接する社員にポロシャツの制服を試験導入する。
法改正が追い風、AI診断や在宅勤務も導入
職場の熱中症対策を義務化した改正労働安全衛生規則が、昨年6月に施行されたことも追い風となっている。コクヨは工場に休憩用プレハブ小屋やファン付き作業服を整備し、配送センターの断熱性能を高めた。従業員のスケジュールや体調に応じ、自主的な在宅勤務も認めている。
クボタは熱中症診断ができる人工知能(AI)カメラを試験導入した。同社は「異常気象といえる夏の暑さは『リスク』と捉えている」と説明し、今後も熱中症対策を充実させる方針を打ち出す。
暑さ対策に特別な予算を設ける企業もある。りそな銀行は、屋外で訪問活動を行う営業担当者向けに、各拠点で必要な熱中症対策物品を購入できるよう、通常の営業店経費とは別に追加予算を措置。購入対象には水やスポーツドリンク、携帯型ファンなどがある。同社は「近年の暑さを踏まえると、熱中症対策は従業員個人の自己管理だけに委ねるものではなく、会社として支援を行う必要がある」との認識を示している。



