建設現場の職人を守る「主守手」開発、岐阜・大野町の三気建設
建設現場の職人を守る「主守手」開発、岐阜・大野町の三気建設

岐阜県大野町の建設会社「三気建設」が、現場で働く職人のためのハンドクリームとスキンケアシートを独自に開発した。化粧品会社での勤務経験を持つ杉山阿有美さん(33)が、父が社長を務める同社の職人のために開発。気軽に「肌メンテナンス」をしながら働ける環境づくりに取り組んでいる。

化粧品会社での経験を生かして

杉山さんは大学の経営学部を卒業後、東京の大手化粧品会社に就職。デパート内の美容部員として顧客の肌の悩みに向き合い、本社の商品開発部署では既存商品の刷新や新商品の開発を担当した。29歳頃に「ブランドをゼロから創りたい」と転職を決意し、別の化粧品会社で年齢に応じた女性の髪と地肌の手入れに焦点を当てたヘアケアブランドを生み出した。

職人の悩みから生まれた商品

約3年がたちブランドが成長する一方、三気建設では人手不足が深刻化。父が経営だけでなく現場にも出向かないと回らない状況だった。「社会を支える、いい仕事なのにもったいない。生き生きと働ける環境を整えたい」とUターン就職した。

三気建設では約10人の職人が、山や高速道路の斜面を崩れないように保護するほか、県内外の土砂災害現場で土砂の撤去や通路の確保などを行っている。職人一人一人と話す中で、共通の悩みとして手荒れが浮かび上がった。「こういう仕事だから仕方ない」と諦めている人も多く、職人が使いやすいハンドクリームの開発を決めた。

試作品を実際に職人に使ってもらい、製造委託先に職人の手の荒れ具合や使用頻度、手を洗う頻度などを伝え、ベタつきが仕事に支障を来さないよう試行錯誤。開発から約9か月でハンドクリームが完成し、「現場の主である職人を守る手段を」との意味を込めて「主守手」と名付けた。

現場での反響と新たな商品

営業担当の男性が県内の建材店に営業に行くと、当初は「こんなもの使わないよ」と断られたが、「とりあえず使ってみてくれ」と1個置いて帰ると、その日のうちに「めちゃくちゃ良かった。こんなに心地いいのか」と喜びの電話があった。その後、定期的にリピートされ、建材店には一般の人がハンドクリーム目当てに訪れるほどの人気となった。

さらに、ハンドクリームの試作で職人から意見を聞く中で、若い世代に「顔の肌荒れ」の悩みが多いことも判明。日焼けが原因でヒゲ脱毛を断られた職人もいたという。「若手にとって『肌を整えること』は自己肯定感を高める大切な要素になっている」と、潤いを与えながらもべたつかないスキンケアシートを開発した。同社の職人で弟の敬亮さん(29)も愛用者の一人で、書類作業の前にハンドクリームを塗って気持ちを切り替えたり、現場の昼休憩にスキンケアシートでリフレッシュしたりしている。

「自分をいたわりながら働く文化が少しずつ根付いてくれたら」。杉山さんは、開発した商品を通じて次世代が建設業に入りやすい風土作りに力を注いでいる。