ラッコとジュゴン、回復の兆し 北海道・沖縄で定着へ
ラッコとジュゴン、回復の兆し 北海道・沖縄で定着へ

日本周囲の海の動物をめぐる環境は、乱獲の禁止や水質規制、保護意識の高まりなどで改善した部分もある。近年、長く人前から姿を消しながら復活する動物もいる。北海道東部の霧多布岬では、ラッコが観察できる場所として観光客が急増している。

ラッコ、北海道で約50頭に回復

北米から千島列島沿岸に生息するラッコは、毛皮目的で乱獲され、1900年代初頭に絶滅寸前まで数を減らした。1911年に日米英露で保護条約が締結され、日本では1912年に「臘虎膃肭獣猟獲取締法」が施行されて捕獲が全面禁止されたが、北海道ではすでに姿を消していた。

日本では1980年代から水族館で大人気となり、最盛期には全国で約122頭が飼育された。だが繁殖が難しく、現在は鳥羽水族館のわずか2頭になっている。一方で野生のラッコは90年代後半から北海道東部で目撃情報が増え始め、2009年には釧路川に「くーちゃん」が現れ、2014年には根室沖の無人島で繁殖が確認された。現在は北海道で約50頭が生息するとみられる。

観察ルール整備で定着へ

NPO法人「エトピリカ基金」理事長の片岡義廣さんは、2016年にメス2頭、オス1頭が霧多布岬に定着してからラッコの記録を始め、現在は年に約300日観察している。片岡さんは町や観光協会に観察ルールの整備を働きかけ、町は遊歩道外の立ち入り禁止やドローンの飛行禁止などの自主ルールを定めた。その結果、ラッコは約10頭まで増えた。

ただ将来も定着するかは楽観できない。2016年に現れたメス1頭は8頭の子を産み、6頭を育てたが、昨年春にシャチに襲われて姿を消した。片岡さんの記録では、他のメスの子で育ったのは1頭だけで、野生下でも繁殖は難しいという。

ウニ漁との共生模索

京都大野生動物研究センターの三谷曜子教授は、2018年から道東のラッコの実態調査を始めた。海外ではラッコがウニを食べてコンブを守るとされるが、日本ではウニが漁業資源のため摩擦が懸念される。調査の結果、道東のラッコはウニやカニの他、漁業資源にならない貝も好んで食べていることがわかった。

2021年に赤潮でウニが全滅した年も、ラッコは貝を食べて生き延び、赤潮が収まるとウニも復活した。三谷さんは「貝を好む性質は道東のラッコ特有かもしれないが、漁業者の不安感を和らげられた」と話す。

ジュゴン、沖縄で親子確認

沖縄・久米島では昨年4月、ダイバーの紙治美さんが海中でジュゴンを目撃した。その1か月前、台湾で約90年ぶりに定置網にかかったジュゴンと、傷痕が一致し、同じ個体と判明した。ジュゴンが台湾から久米島まで約540キロを1か月で移動したことになる。

沖縄県環境科学センターの小澤宏之所長は、沖縄のジュゴンが絶滅を免れている要因として、フィリピンから黒潮に乗って移動する個体がいると考えている。ジュゴンは時速3キロで泳ぐが、最大流速7キロの黒潮に乗れば1000キロ以上離れた沖縄に到達できるという。

小澤さんは「ジュゴンは沖縄に豊かな自然が残っていることを示す象徴の一つだ。藻場の重要性にも目を向け、人間とジュゴンが共生する環境を守ることが大切だ」と話している。