AOKIが年10万件の「顧客の声」を発注会議に直結、VOC経営の全貌
AOKIが年10万件の「顧客の声」を発注会議に直結、VOC経営の全貌

AOKIホールディングスは、スーツ需要の縮小が続く中、カジュアルやレディースの拡大を図るため、年10万件に及ぶ「顧客の声」のデータ分析を発注会議や在庫最適化に直結させる取り組みを本格化している。

新体制で挑むVOC経営

紳士服大手のAOKIは6月、社長に小出大二郎氏が就任した。小出氏はアパレルメーカーや縫製会社の経歴を経て2022年にAOKIに入り、商品部門を担ってきた人物だ。

新体制のファッション事業は、商品売上高の構成比を「メンズビジネス4割、メンズカジュアル3割、レディース3割」とする目標を掲げている。メンズビジネスの売り上げ規模を保ちながら、カジュアルとレディースを伸ばす。2026年3月期は、ビジネス衣料の売り上げが前年比2.3%減だった一方、カジュアル衣料を14%伸ばした。

スーツ離れと市場縮小

スーツ離れは業界全体の課題だ。競合の青山商事が公表するメンズスーツの販売着数は、2016年3月期の222万着から2026年3月期には95万着へと、10年で半減した。オーダースーツの人気によって平均販売単価は上がったものの、着数の減少を補えていない。

スーツの需要が縮む中、AOKIは何を軸にカジュアルやレディースを拡大していくのか。その答えとして、同社はファーストリテイリングの手法を機に本格化させた年10万件に及ぶ「VOC」(Voice of Customer、顧客の声)のデータ分析を挙げる。

数値化しにくい顧客の声を活用

数値化しにくい顧客の生の声を、発注会議や在庫最適化に直結させる同社の「技術×接客×顧客データ」の処方箋とは。背景には、パジャマスーツの顧客がスーツを買う理由がある。AOKIホールディングスの渕上宗一郎会長、AOKIの小出大二郎社長、立川貴博専務に聞いた。

小出氏は「スーツが晴れ着化、つまり特別な場で着る服になりつつあるのは事実です。働き方の変化や着こなしの自由化によって、スーツからセットアップへ、当社のパジャマスーツのような商品へと需要が移っています」と語る。パジャマスーツとは、パジャマのような着心地を目指した、当社のビジネスウエアブランド「AOKI」のセットアップだ。

「私はずっとものづくりに関わってきましたが、重衣料であるスーツを作る技術をキャッチアップするのは、そう簡単ではありません。工程が非常に多く、着心地をどこまで追求できるかを左右するパターンメーキングや縫製仕様など、長く培ってきた技術が必要になります。当社は、その技術をカジュアルやレディースの提案にどう生かすかを強化しています」と述べた。

パジャマスーツは、カジュアルで簡易的なセットアップに思われがちだが、実は服が非常に立体的に作られている。しわになりにくく着心地が良いだけでなく、見た目にも立体感がある。これは、スーツを作ってきた会社でなければできない技術だと小出氏は強調する。

「モノと人の両輪はまさにAOKIの強みであり、そこにどう磨きをかけるかがこれからの私の任務です」と語った。