パナソニックホールディングスが発表した2026年度第1四半期(2026年4月~6月)連結業績は、売上高が前年同期比6.4%増の2兆189億円、営業利益が同110.0%増の1824億円、調整後営業利益が同103.7%増の1864億円、税引前利益が同107.7%増の1889億円、当期純利益が同89.2%増の1351億円となった。
41年ぶりの過去最高益
和仁古 明グループCFOは、「第1四半期は、想定していた計画に対しても、かなり高い実績となっている。AIインフラ関連事業に加えて、データセンター需要の恩恵を受けるFAソリューションやプロセスオートメーションなどの周辺事業が想定以上に伸長し、第1四半期の利益として過去最高を達成した。営業利益は、1985年以来、41年ぶりの過去最高益の更新になる。調整後営業利益はすべてのセグメントで増益になっている。低迷していた時価総額から脱却したいという思いなど、ひとつひとつが実績として結実した」と総括。その上で、「2026年度から成長フェーズに入ると宣言したが、第1四半期実績は、そこに向けて力強さを感じてもらえる」と振り返った。
一方で、「41年ぶりの過去最高益の更新とはいえ、まだスタートラインに着いたところである。なにかを成し遂げたという気持ちよりも、2028年度に向けて、より高い水準を目指さなくてはならないと考えている」と述べた。
通期見通しを上方修正
第1四半期の好調な業績を背景に、2026年度(2026年4月~2027年3月)の連結業績見通しも上方修正された。売上高は2000億円増額の前年比3.1%減の7兆8000億円、営業利益は400億円増額の同149.6%増の5900億円、調整後営業利益は500億円増額の同45.2%増の6500億円、税引前利益は400億円増額の同124.2%増の5900億円、当期純利益は300億円増額の同137.4%増の4500億円。減益計画となるのは、ハウジング事業で年間3700億円、Ficosaで年間2375億円の非連結化の影響がある。
和仁古グループCFOは、「BBUやコンデンサ、多層基板材料など、AI関連商材が、期初の想定通りに順調に拡大している。さらに、ポジティブな変化が表れているのが、コネクトの実装機や、インダストリーのFAソリューションなどであり、需要が期初の想定を上回る水準で推移している。第1四半期のAIデータセンター需要の拡大と、その波及効果を踏まえて、通期の売上高、利益を上方修正した。実装機は第2四半期以降も需要が継続すると見ている。AI関連商材への旺盛な需要は、一時的なものではなく、中長期的なものになると判断している」と述べた。
セグメント別の業績
コネクトの売上高は前年同期比16%増の3523億円、調整後営業利益は197億円増の259億円。AIサーバーを含むICT需要を捉えたプロセスオートメーションが好調で、アビオニクスやBlue Yonderも増販となった。Blue Yonderは、コグニティブソリューションを中心としたSaaSの販売が増加し、粗利の改善効果やネイティブSaaS化に向けた戦略投資の減少もあり、69億円の増益になった。
ソフトウェア事業について、和仁古グループCFOは「ソフトウェアビジネスは、一度、しっかりとしたプロダクトを開発すると、それ以降は、限界費用が低いビジネスモデルを構築できる。2026年度からそのフェーズに入ってきた。売上高を伸ばしながら、それ以上の粗利を確保できている。2026年度通期では、連結で230億円の赤字を見込んでいるが、2027年度以降は、赤字額も大きく縮小できる」と説明した。
エレクトリックワークスの売上高は前年同期比10%増の2768億円、調整後営業利益は142億円増の257億円。国内電材やインドをはじめとした海外電材がともに堅調で、原材料高騰の影響があるものの、構造改革効果によって増益となった。
HVAC&CCの売上高は前年同期比13%増の3999億円、調整後営業利益は11億円増の168億円。前年同期に環境エンジニアリングの大型案件があった反動が見られたが、ルームエアコンや欧州のA2W、コールドチェーンが増販となり、全体では増収を確保した。
エナジーはデータセンター向け蓄電が成長
エナジーの売上高は前年同期比43%増の3140億円、調整後営業利益は96億円増の414億円。車載電池は、北米工場の販売量拡大や価格改定などで増収となったが、カンザス工場の立ち上げに伴う固定費の増加などにより若干の減益。一方、産業・民生では、生成AI市場の拡大に伴うデータセンター向け蓄電システムの旺盛な需要を背景に高い成長を見せた。
和仁古グループCFOは「データセンター向け蓄電システムは、期初の想定通りに、力強い成長を継続している。供給能力の拡大を急ピッチで進めており、セルの増産については、国内の車載向けラインからの切り替えに続き、カンザス工場でも、2028年度からのセルの量産を開始する予定である。また、モジュールは、2026年度第2四半期から、メキシコ第2工場で量産を開始し、2027年度からは、第3工場での量産開始を予定している。メキシコ工場でのモジュールの増産に向けて、電源メーカーを含め、関連サプライチェーンの現地化を推進している」と述べた。さらに、パナソニックインダストリーとの連携により、2026年度内にCBUソリューションの量産を開始するといい、「社内に、電池とキャパシタという両方のコアテクノロジーを持つ強みを最大限に発揮できる」と語った。次世代高電圧HVDC対応BBUも2026年度内に量産の目途をつける考えを示した。
エナジーでは、データセンター向け事業として2026年度に前年比1.7倍の5500億円の売上高を目指す。「年間見通しの達成に向けては想定通りに進捗している。将来の成長に向けた供給体制の整備も着実に進展している」とした。
車載電池については、米国でのEV販売台数が2025年度の一時的な落ち込みから回復基調にあり、戦略パートナーのテスラでは車両ミックスの変更があったものの、デマンドは依然高い水準を継続していると説明。その一方で、「カンザス工場の立ち上げに苦戦し、第1四半期は、期初に想定した供給量を達成できなかった。原因はオペレーション面での習熟度に課題があったことだ。ネバダ工場のノウハウを横展開し、垂直立ち上げを狙ったが、すべての変化点を想定しきれていなかった。想定外のトラブルがあった。お客様からは、継続して強い要望があり、そのデマンドに応えられなかったことには、忸怩たる思いがある。カナザス工場の立ち上げは、最優先事項として取り組み、第2四半期以降は、ネバダ工場とのモデルミックスの見直しなどにより遅れた分を巻き返し、年間では期初想定通りの46GWhの供給を達成する計画だ」と述べた。
インダストリーはAI関連が1.4倍に
インダストリーの売上高は前年同期比18%増の3343億円、調整後営業利益は244億円増の431億円。AIインフラ関連事業の増販に加え、旺盛なデータセンター需要を背景に、サーボモーターやセンサーなどの半導体製造設備向けFA機器が拡大した。AI関連事業の売上高は749億円と前年同期比1.4倍に拡大している。
和仁古グループCFOは「想定を上回る販売を達成している。足元の好調な事業環境を反映し、年間見通しを、2700億円から400億円上積みして3100億円に修正する」とし、「需要に対応するために、供給能力の拡大も急ピッチで進める。多層基板材料では、蘇州、広州、アユタヤにおいて、増産に向けた工場建設を進めているのに加え、主材料であるガラスクロスなどは調達先の複線化を含めたサプライチェーンの強靭化に手を打っている。導電性高分子コンデンサについても、各拠点における能力増強を前倒しで進めている」と述べた。その上で、「AIサーバーの消費電力の急増に伴い、注目が高まっているスーパーキャパシタでは、エナジーのCBUソリューション向けの供給に加えて、2026年度中には、外販向けデバイスの量産を千歳工場で開始する。旺盛な需要を背景に、各事業の利益マージンが高まっており、今後も積極的な事業展開を進める」と意欲を見せた。
スマートライフは減収も増益
スマートライフの売上高は前年同期比2%減の3111億円、調整後営業利益は34億円増の122億円。国内はビューティーを中心に増販となったが、中国の大型家電や欧州AVC商品など海外での減販影響が大きく、減収になった。「中国での内需の減少や、欧州では意図的にAVC商品の販売を絞ったために、売上高は前年割れとなっている。だが、構造改革の成果もあり、増益になっている」と述べた。
第1四半期は、銅や銀、樹脂、メモリ価格の高騰などを中心に、原材料・物流費がマイナス370億円の影響となったが、価格改定や合理化などの効果で540億円のプラスを創出した。2026年度通期では、原材料・物流費は材料高騰などで660億円のマイナスを想定する一方、価格改定や合理化などで596億円のプラスを見込む。中東情勢の影響によるビジネスへの需要減などの影響は、現時点では限定的としている。
熊本地震への言及と構造改革
和仁古グループCFOは決算会見の冒頭で「令和8年熊本地震」に触れ、「亡くなられた方に哀悼の意を表するとともに、被災者にお見舞いを申し上げる」と述べた。その上で「パナソニックグループにおいては、事業活動に重大な影響は確認されていないが、状況を注視し、従業員の安全確保を最優先に、必要な対応に万全を期する。被災地域の状況を踏まえながら、必要な支援についても検討する」と言及した。
2025年度に実施した構造改革の手応えについては「しっかりと実績につながっている。インダストリーやスマートライフ、本社部門では、多くの構造改革費用をかけたが、第1四半期の各セグメントの実績からも、そこで成果が出ていることがわかってもらえるだろう。多くの痛みや苦労を伴う構造改革を行い、不採算事業には聖域なくメスを入れた。だが、これは2025年度でやり切ったというものではなく、これからも続けていく必要がある」と述べた。
第1四半期決算の発表時点で通期見通しを上方修正したが、第2四半期以降もAIインフラ関連事業や周辺事業への旺盛な需要が続くと予測される。為替の円安影響がポジティブに働くことや、米国関税の還付影響がまだ盛り込まれていないことなどから、今後さらに上方修正される可能性もある。



