アルファベットはAI競争の中で独特の立場にある。自社開発のAIチップ「TPU」、基盤モデル「Gemini」、検索やYouTubeといった配信面までを一社で握る、いわゆるフルスタック体制だ。生成AIの登場当初は「検索が破壊される側」と見られていた同社が、この体制をどう収益につなげるかが、ここ数四半期の焦点だった。
公表されたばかりの2026年4〜6月期決算は、売上高1198億ドル(前年比24%増)と12四半期連続の2桁成長を記録。クラウド事業は前年比82%増となる248億ドルまで拡大し、受注残高は5140億ドルに膨らんだ。半導体の外販や検索の再成長など、事業モデルの変容をうかがわせる兆候が、経営陣の発言の端々に表れている。
TPUをシステムとして納入、初の売上計上
今四半期、アルファベットは自社開発のAIチップ「TPU」を、システムとして顧客のデータセンターに納入し、初めて売上を計上した。これまでTPUは自社のデータセンター内で使い、クラウド経由で計算能力を貸し出すためのものだった。アナト・アシュケナジCFOは「今四半期の計上額は小さいが、2026年を通じて拡大し、収益の大半は2027年に実現する」と説明している。
在庫負担でフリーキャッシュフローはマイナス59億ドル
会計上の動きも特徴的だ。TPUシステムの販売契約は5140億ドルのクラウド受注残高に含まれ、納入に先立って在庫を積み増しており、営業キャッシュフローを先に圧迫している。実際、同四半期のフリーキャッシュフローはマイナス59億ドルとなった。売上原価の増加要因としても「顧客へのTPUシステム販売に伴う在庫コスト」が明示された。
「無借金経営の終わり」という転換点
半導体を売るために借金する——。在庫の積み増しがフリーキャッシュフローのマイナスとして先行して表れた構図は、そう表現することもできる。TPUの外販は受注残高を積み上げる一方、納入前の資金負担を先に生む。この構造は、AI半導体を売るための新たな事業モデルへの移行を示すとともに、従来型の無借金経営からの変化を浮き彫りにしている。



