米国の経済学者ラジ・チェティらの研究によると、1940年生まれでは約9割の人が親より多く稼いでいたが、1980年代生まれではその割合が約5割まで低下している。親の所得が高いほど、子どもが親を超える割合は下がる傾向にあり、親が所得上位10%前後の場合、子どもが超える割合は約31%、上位1%前後では約14%まで下がる。
親の所得と子どもの所得の関係
日本の研究(ユエダ氏など)では、親の所得と子どもの所得には一定のつながりがあるとされる。ただし、親の年収がそのまま子どもに引き継がれるわけではない。遺伝子医学に詳しい岡博史医師は「親が東大卒だから子どもも東大に行く、親が高年収だから子どもも同じように稼ぐ、というほど単純ではありません」と語る。
遺伝と学歴・年収の関連
2018年の『Nature Genetics』に発表された研究(リー氏ら)では、学歴と関連しやすい遺伝子上の特徴が1,271か所見つかったが、教育年数の違いを説明できる範囲は11~13%程度にとどまる。所得についても、フィンランドの双子データを用いた研究(ヒーティネン氏ら)では、生涯労働所得の差のうち女性で約40%、男性で半分強が遺伝的要因と関連すると報告されている。しかし、岡医師は「年収は知能だけで決まりません。性格、行動力、職業選択、リスクを取れるかどうか、時代環境などが絡みます」と指摘する。
正解を選ぶ力と稼ぐ力の違い
岡医師は、高学歴の人が必ずしも大きく稼ぐとは限らない理由として、「勉強は努力を重ねればリスクを取らずに成果を出せるが、経営や商売で大きく稼ぐにはリスクを引き受ける必要がある」と説明。高学歴層は大企業や専門職など安定した進路に進みやすく、リスクを取らない選択をする傾向があるという。
親の成功体験が子の年収を低くする可能性
親が自分の成功体験を子どもに重ねすぎると、子どもが別の道を選びにくくなる。岡医師は「勉強で伸びる子もいれば、人との関係性で力を発揮する子、商売や発信に向いている子もいます。親と同じルートに乗せることだけが可能性を伸ばす方法ではありません」と話す。また、ハーバード・ビジネス・スクールの発表では、働く母親のもとで育った米国の娘の平均年収は専業主婦家庭の娘より23%高く、管理職に就く割合も高かった。



