山梨県にある住宅地「コモアしおつ」は、開発から35年が経過した今も、その美しい景観を保ち続けている。この街は「天空のマチュピチュ」とも呼ばれ、山を切り拓いて作られた独特の地形と、自然と調和したデザインが特徴だ。
曲線と狭い道幅でスピード抑制
街区内の生活道路は、あえて曲線や折れが取り入れられ、車のスピードを抑える効果があるという。道幅は5メートルとやや狭めに設定し、路上駐車をしにくくする心理的な効果も狙っている。これにより、歩行者が安全に通行できる環境が整えられている。
公園などにつながる緑道は花や緑であふれ、日陰ができ、ベンチも設置されている。実際に訪れると、小学生や散歩する住民の姿があり、生活の中で使われている道だと実感できる。筆者が季節を変えて訪れた際には、冬枯れの木々や春の草花、初夏の濃い緑など、季節ごとに異なる表情を見せてくれた。
「時計のこうえん」など3つの公園が連なる
緑道を抜けると、「時計のこうえん」に到着する。このほかにも「石のこうえん」「風のこうえん」があり、コモアしおつの中心部に横に連なっている。これらの公園を結んでいるのが、歩行者専用の「こうえんみち」だ。
まちなみの構想にあたり、設計を手がけた宮脇さんは、気候や自然環境に通じるものがある北米・カナダの住宅地を視察したという。そこで得た景観のイメージを参考に、自然に調和する高原都市のようなまちなみが形づくられていった。
公園を見渡すと、背の高い針葉樹が目立つが、広葉樹も混ざり独自の風景を作り出している。季節によって表情が変わるまちなみを見られることは、このまちで暮らす魅力の一つと言えるだろう。
制約のある場所だからこそのアイデア
実は「こうえんみち」の下には、開発前から導水施設が通っていた。宅地として使うには制約があったが、宮脇さんはこの場所を緑道として生かした。積水ハウスの担当者は「まちの中心部に住宅を建てられないのはもったいないという考えもありますが、『皆さんが利用できる広い緑道をつくればいいのではないか』というのが宮脇さんの考え方です。宮脇さんはもともと、緑道を生活の一部にし、季節の移ろいを感じられるようなまちなみを提唱していました。そうした考え方と、この場所の条件がうまく重なったんです」と説明する。
住居表示の木の看板には、コモアしおつのマークがあしらわれており、街の統一感を高めている。



