山梨「天空のマチュピチュ」コモアしおつ、自然と調和した美しい街であり続ける理由
山梨「天空のマチュピチュ」コモアしおつ、美しい街の秘密

山梨県上野原市のJR中央本線「四方津」駅北側の高台に、斜行エレベーターで結ばれた広大なニュータウン「コモアしおつ」がある。1991年にまち開きした積水ハウスの分譲住宅地で、丘陵地の眺望や緑を生かした独自のまちなみが特徴だ。開発から35年以上経った今も、その美しい景観は保たれている。なぜこの街は「美しい」ままなのか。その秘密は、建築家・宮脇檀さんの設計思想と、住民の努力にある。

ガードレールのない道路計画

コモアしおつを歩くと、まず気づくのがガードレールの不在だ。まちを一周する外周道路「コモア・ループ」にはガードレールがなく、歩道は車道より20cm高く作られている。かつて開発に携わり、現在もこの街に住む松田健司さんは、「道路と歩道の間のガードレールをなくして、歩道を20cm高く上げてつくっています。この高さがあれば、歩道に車が入ってこないでしょう」と説明する。高低差で車と人を分離するこの工夫は、景観を損なわずに安全性を確保している。

自然との共生を重視した設計

まちなみづくりに大きな影響を与えたのが、景観設計で知られる建築家の宮脇檀さんだ。宮脇さんが重視したのは「自然との共生」と「軸の通った景観形成」。その考えのもと、道路や公園、緑道、植栽のあり方が見直され、住民の目線や歩く動線に配慮した設計が進められた。松田さんは「宮脇さんはコミュニティも大切にされていました。道端での井戸端会議や子どもたちが安心して遊べるように道路計画がされています。小学校や公園に続く道は、季節を感じられるように緑道を計画しました」と語る。

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単調に見えない総2階建ての住宅

コモアしおつでは、総2階建ての住宅が多い。通常、単調になりがちなこのデザインだが、ここではそうではない。その理由は、各住宅の外観や色使いにバリエーションを持たせ、さらに緑が効果的に配置されているからだ。また、住宅の塀やフェンスがほとんどなく、オープンなまちなみが形成されている。これにより、視線が遮られず、緑と調和した景観が生まれている。

住民の高齢化と景観維持の課題

開発から35年が経過し、住民の高齢化が進む中で、景観をどう維持するかが課題となっている。コモアしおつでは、住民による自主的な管理活動が行われている。例えば、植栽の手入れや清掃活動などが定期的に行われ、まちの美しさを保っている。また、新たな住民を呼び込むための取り組みも進められており、空き家の活用やリノベーションなどが検討されている。

通勤のまちから暮らし続けるまちへ

かつては東京への通勤圏として開発されたコモアしおつだが、現在は定住を促進する方向にシフトしている。その背景には、リモートワークの普及や、自然豊かな環境での生活を求める人々の増加がある。松田さんは「このまちは、単なるベッドタウンではなく、暮らし続けるための場所です。これからも、自然と調和したまちなみを守りながら、新しいライフスタイルに対応していきたい」と話す。

北米・カナダの高原都市をイメージ

コモアしおつのまちのイメージは「北米・カナダの高原都市」だという。そのコンセプトは、道路や公園、住宅のデザインに一貫して反映されている。例えば、広々とした道路と緑地、そして統一感のある住宅群は、まさに高原リゾートのような雰囲気を醸し出している。このコンセプトが、35年経っても色あせず、むしろ時代に合った価値として認識されている。

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まとめ:自然と共生する未来型ニュータウン

コモアしおつは、単なる住宅地ではなく、自然と人間が共生する未来型のニュータウンとして、多くの示唆を与えてくれる。ガードレールや塀をなくし、高低差や緑で安全性と景観を両立させた設計は、今後のまちづくりにおいても参考になるだろう。住民の努力と建築家のビジョンが融合したこの街は、これからも「美しい街」としてあり続けるに違いない。