中央線の車窓から、山肌を貫く巨大なチューブ状の建造物が見える。その正体は、山梨県にある「コモア・ブリッジ」だ。バブル期に開発された標高差約80メートルの斜面を結ぶ斜行エスカレーターで、まるで天空のマチュピチュのような景観を生み出している。
バブルが生んだ規格外の住宅地
コモア・ブリッジは、山梨県の丘陵地に広がる住宅地「コモアしおつる」の一部として建設された。バブル経済の絶頂期に計画され、住民の移動手段として全長約200メートル、高低差約80メートルの斜行エスカレーターが設置された。エスカレーターは4連に分かれており、途中の踊り場で乗り換えながら進む仕組みだ。
運行時間は限定されており、朝は駅へ向かう下り、夜は住宅地へ戻る上りとして稼働する。エレベーターは深夜帯以外は2基とも動いているが、エスカレーターを時間限定で動かすことで混雑を分散し、運行効率を高めている。
住民の生活を支える交通インフラ
この大規模な交通システムを維持するには、当然ながら費用がかかる。住民が維持費を負担し、改修・修繕工事も実施してきた。コモア・ブリッジは山の上の暮らしを支える重要な交通インフラであり、今も欠かせない役割を担っている。
住民の松田さん(仮名)は現在、週2回程度利用している。「下るときに大自然を眼下に見ながら行けるのがいい。のぼるときは『これでやっと我が家に帰れる』という落ち着きがある。オン・オフを切り替える手段になっている」と語る。
まちのスーパー「公正屋」
山の上の独立したまちだからこそ、食料品や日用品を買える場所は必要だ。斜行エレベーターを降りた先にある「コモアプラザ」内には、まち唯一のスーパー「公正屋コモアプラザ店」がある。公正屋は山梨県東部の地域密着型スーパーで、まち開きに合わせて出店した。品ぞろえがよく、総菜や青果は都内より手頃に感じられる。元が魚屋なので鮮魚も充実しており、小学校の体操着なども販売している。
「週末に森の人になる」というコピーで販売されたこの住宅地は、バブル期の夢の跡でありながら、今も住民の生活を支え続けている。



