海外不動産投資は「節税になる」というイメージがあるが、実際には数百万円の損をするケースが少なくない。富裕層専門税理士の森田貴子氏は、海外不動産購入に潜む3つの落とし穴を指摘し、購入前に必ず確認すべき15項目のチェックリストを公開した。
海外不動産が節税にならない3つの理由
森田氏によると、海外不動産投資を節税目的で行う場合、以下の3つのリスクを理解しておく必要がある。
1. 日本の何倍も面倒な海外の相続手続き
海外の不動産を相続する場合、現地の法律に従った手続きが必要となる。日本の相続手続きと並行して進める必要があり、言語の壁や制度の違いから、時間とコストが大きく膨らむ。森田氏は「日本の相続申告期限との衝突が大きな問題になる」と警告する。
2. 日本が課税を追いかけてくる
海外で所得を得ても、日本の税制が課税対象とするケースが多い。海外不動産の賃貸収入や売却益は、日本の確定申告で申告する必要があり、二重課税を防ぐための措置を取らなければならない。森田氏は「海外で所得を得ても、日本の税制が追いかけてくる」と指摘する。
3. 円建てリスクの回避策として人気だが…
海外不動産は円安対策としても注目されるが、現地通貨建てのローンを組む場合、為替変動リスクが生じる。また、物件の管理や修繕にかかる費用が日本より高くなることもあり、想定外の出費が発生する可能性がある。
購入前に必ず確認する15項目
森田氏は、海外不動産を購入する前に以下の15項目をチェックするよう推奨している。
- 現地の不動産税や固定資産税の税率
- 購入時の諸費用(仲介手数料、登記費用、司法書士費用など)
- 売却時の譲渡所得税のルール
- 相続税の現地と日本の二重課税の有無
- 現地の法律で外国人所有に制限がないか
- 物件の管理体制(管理会社の信頼性、費用)
- 賃貸需要と空室リスク
- 為替変動がキャッシュフローに与える影響
- 日本の金融機関からの融資が可能か
- 現地の税理士や弁護士の紹介を受けるか
- 物件の状態(耐震基準、修繕履歴)
- 周辺環境(治安、インフラ、将来開発計画)
- 出入国のしやすさ(ビザ要件)
- 現地通貨の安定性
- 災害リスク(地震、洪水、ハリケーン)
富裕層の定義と節税の本質
森田氏は「1億円程度の資産では富裕層とはいえない」と断言する。世界基準では、プライベートバンクと付き合えるレベルである10億円以上の金融資産が最低ラインだという。野村総合研究所の分類では「超富裕層」以上がこれに相当するが、不動産などの実物資産は含まれていない点に注意が必要だ。
税金と社会保険料が上昇し続ける中で富を増やせる人は、「稼ぐ力」以上に「税の仕組み」を味方につけている。森田氏は「知っているか知らないかで、手元に残る資産がまったく変わってくる」と強調する。
専門家の見解と注意点
海外不動産投資は、節税目的だけでなく資産分散として有効な側面もある。しかし、現地の税制や法律、為替リスクを十分に理解しないまま購入すると、期待した節税効果が得られず、むしろ損失を被る可能性が高い。森田氏は「購入前に必ず専門家に相談し、15項目のチェックリストを活用してほしい」と呼びかけている。



