都心の高額タワーマンションで在庫増加、中古マンション市場の局所的な流動性低下が明らかに
都心の高額タワーマンションで在庫増加、中古市場の局所的な流動性低下

マンションリサーチは2026年8月14日、東京都の中古マンションの在庫や販売日数、成約までの値下げ率、成約価格などの推移を分析した結果を発表した。調査は2022年1月から2026年6月までに、東京都の中古マンション96,416事例を対象に行われた。

首都圏の在庫増加は都心部に集中

首都圏の中古マンション市場では、在庫増加や流動性低下を報じる報道が増えている。東日本不動産流通機構(REINS)の公開データでも、首都圏全体の中古マンション在庫は直近で増加傾向にある。しかし、東京都と周辺3県に分けてみると、埼玉県、千葉県、神奈川県では在庫がむしろ減少傾向にある。

首都圏全体の在庫増加は一律に起きているわけではなく、東京都、特に都心部への集中が全体の数字を押し上げていることが分かった。

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都心5区は値下げしても販売日数が長期化

都心5区では、直近で成約までの値下げ率が大きくなっている。一方、値下げ率が上昇しているにもかかわらず、販売日数も増加している。つまり、価格を下げても売却までに時間がかかる状況になっている。都心5区には1億円、2億円、それ以上の高額物件も多く、金利上昇による住宅ローンの借入可能額への影響に加え、富裕層の投資判断や資産配分の変化も価格形成に影響するとみられる。

一方、東京都23区から都心5区を除いたエリアでは、こちらも成約までの値下げ率が上昇しているものの、値下げによって販売日数は一定程度維持されている。このエリアは実需層の割合が高く、住宅ローンを利用して購入する世帯も多い。金利上昇で購入可能な価格水準が低下するなか、売主側が価格を調整することで購入者との価格の折り合いがつき、成約に至る構造がみられる。

都心5区以外は平均6,400万円前後で推移

都心5区を除く23区では、直近の成約価格が概ね6,400万円前後で推移している。現在は住宅ローン金利が上昇し、購入者の返済負担が以前より大きくなっている。その環境を考慮すると、平均成約価格6,400万円前後という水準には、すでに一定の価格調整が織り込まれている可能性がある。

一方、都心5区では価格のばらつきが大きく、全体としても価格が減少方向に動いている。高額物件では、まだ新たな価格水準を探している段階にある可能性がある。

高額マンションの在庫増加が市場全体を押し上げる

売出価格8,000万円以上のマンションについて、個別マンションの在庫推移を確認すると、さらに傾向が明確になった。在庫が減少傾向のマンションを赤、横ばいを黄、増加傾向を青で示したところ、東京都心部、特に千代田区、中央区、港区では青のプロットが多く分布した。一方、都心部周辺では黄色のマンションも多く、在庫が大きく積み上がっているわけではない。

在庫が増加しているマンションには、高額な大規模マンションやタワーマンションが多い。都心部には数百戸、場合によっては1,000戸を超える大規模マンションもあり、1つのマンションで売出在庫が数十戸増加するだけでも市場全体の在庫数を押し上げる。そのため、高額・大規模・タワーマンションの流動性低下が、東京都全体、さらには首都圏全体の在庫統計に大きく影響しているとみられる。

今回の分析から、首都圏全体で中古マンションの流動性が低下しているとは言い切れないことが分かった。埼玉県、千葉県、神奈川県では在庫が減少傾向にあり、東京都23区でも都心5区を除けば、価格調整を行いながら一定の流動性が維持されている。一方、千代田区、中央区、港区を中心とする都心部では、高額・大規模・タワーマンションの在庫増加と販売期間の長期化が進んでいる。

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今後の中古マンション市場を見るうえでは、首都圏全体の在庫数や平均価格だけでなく、「どのエリア」「どの価格帯」「どのマンションタイプ」で在庫が増えているのかを見ることが重要になる。特に金利上昇によって購入者の予算が変化し、高額物件ほど購入者層が限定されるなかでは、同じ東京都内でもマンションごとの流動性に差が生まれる可能性がある。「在庫が増えた」という数字だけで市場全体を判断せず、どこに在庫が積み上がっているのかを見ることが、今後のマンション価格を考えるうえでも重要になりそうだ。