日本で品種開発された農作物が海外に流出する被害が深刻さを増している。日本ブランドを守る対策を徹底していかなければならない。
果物など農作物の種子や苗木などの海外流出を防ぐ改正種苗法が成立した。品種改良を重ねた質の高い日本の農作物の知的財産権を守る包括的な対策となる。
深刻化する流出被害
新品種の海外流出は後を絶たない。国の機関が開発に33年かけた高級ブドウ「シャインマスカット」の苗木が中国や韓国に流出したのは象徴的な事例だ。本来得られたはずの許諾料は、年200億円にも上るという。被害は甚大だ。
近年はサツマイモの「べにはるか」、ミカンの「あすき」も問題になっている。愛媛県は、独自に開発した高級柑橘「紅プリンセス」の苗木が中国に流出した可能性があるとして調査する。
改正法の内容と効果
新たな品種は、開発者が出願し、農林水産省の審査を経て登録される。登録により、生産や販売を独占できる知的財産権の一つである「育成者権」を得る。
出願から登録までに最長6年かかるため、その隙を突いて種苗を海外に持ち出す、というのが典型的な手口だという。
改正法では、品種の開発者ではない第三者が無断で海外に持ち出そうとした場合、出願を公表した時点で民事訴訟により差し止められるようにした。問題となっている穴を塞ぐことによって、種苗の流出を防ぐことが期待できる。
併せて、税関や警察の水際での監視を強化することが重要だ。
また、農作物の育成者権の有効期限を原則25年から35年に、果樹は30年を40年に延ばした。許諾料を長期間得られるようになるため開発はさらに活発になろう。
残る課題と対策強化
ただ、個人による持ち出しを完全に防ぐのは難しい面もある。品種登録は、国ごとに行われる。国内だけでなく、流出が懸念される国でも品種登録を行うことが権利保護の有効策になる。
これまで海外登録の重要性は指摘されてきたが、手間やコストがかかるため進んでこなかった。こうした課題を含め、流出防止策を強化するために、今回、JAなどによる専門機関が設立された。
海外での無断栽培の監視や正規の手続きによるライセンス供与、権利侵害を巡る訴訟などを担う。着実に体制を強化してほしい。
今年上半期の農林水産物・食品の輸出額は前年同期比で1割超増えて8977億円を記録し、好調だ。日本ブランドを守り、経済の成長につなげていきたい。



