高市早苗政権がここにきて、リフレ政策は取らないと言い出した。きっかけは9月初めのベセント米財務長官の発言だ。対日圧力の根底には、米中のデジタル通貨をめぐる覇権争いがある。
デジタル通貨への移行と中国の戦略
国境を超えた貿易や金融取引、決済の手段が、在来型通貨からデジタル通貨に置き換わろうとしている。デジタル決済は迅速で、送金手数料などのコストが格段に安くなる。
中国の中央銀行である中国人民銀行は、デジタル人民元(e-CNY)の発行を本格化している。中国国内では市民の間で不評で、e-CNYが現金通貨全体に占めるシェアは0.1~0.2%にとどまる。だが、習近平政権は世界での通貨覇権を奪う野心的な戦略を展開する。
人民元経済圏の構築と米国の対応
巨大経済圏構想「一帯一路」沿線国に貿易や投資の決済を働きかけ、人民元経済圏の構築に努める。サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、タイなどとはデジタル人民元による国際決済ネットワークを立ち上げている。
ただし、サウジやUAEは米国の逆鱗に触れるのを恐れ、石油の人民元決済には依然として慎重だが、世界最大の石油の買い手である中国の顔色をうかがう。
脱ドル決済の模索と日本の対応
世界の多くの国々は、絶えず米国による金融制裁をおそれている。通常、国際決済でドルを利用する限り、必ず米国の金融機関を経由しなければならないため、米当局にカネの出所や仕向け先の情報が筒抜けになる。それを嫌うのは、中国、ロシア、イラン、北朝鮮に限らない。
専制主義的な国の多くが脱ドル決済を模索しており、中国はそこにつけ込んで人民元決済サービスの提供を申し出る。第2次トランプ政権は昨年1月の発足後、ただちに法定通貨ドルと1対1で連動するデジタルドル「ステーブルコイン」の普及に全力を挙げると宣言し、ベセント長官が中心になって法制度を整えた。