海底ケーブル敷設船の導入を政府支援、台湾周辺の切断相次ぎリスク対応に懸念
海底ケーブル敷設船の導入を政府支援、切断相次ぎ懸念

政府は、国際通信の99%を担う海底ケーブルの専用敷設船の導入を本格的に支援する。海底ケーブルは生成AI(人工知能)やクラウドサービスを支える基幹インフラとして重要性が増す一方、日本企業は敷設船の保有数で欧米に大きく後れを取る。このままでは経済安全保障上のリスクに対応できないとの懸念が背景にある。

海底ケーブルの現状と敷設船の保有状況

海底ケーブルは、最深部で水深約8000メートルの海底に敷設される。太さは深海部では直径2センチ程度、底引き網漁などで損傷しやすい沿岸部では外装で覆うため4~6センチ程度となる。内部には数十本の光ファイバーが束ねられ、大陸間や他国との高速・大容量通信を支えている。

世界の総延長は、地球37周分に相当する約148万キロ・メートル(2025年時点)。データ通信量の増加に比例し、00年頃の約30万キロ・メートルから急速に拡大してきた。

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敷設船は、ケーブルの設置や保守・修理、海底からの回収を専ら手がける。大型船の場合、船体のタンクに数千キロ・メートル分のケーブルを収納でき、埋設を行う無人潜水ロボットなども搭載している。現在、日本企業による5000トン以上の大型敷設船の保有はNTTが3隻、KDDIが2隻の計5隻にとどまる。寿命は40年前後とされ、30年超と老朽化した船もある。海底ケーブルの製造で世界シェア(占有率)の2割を占めるNECは、敷設船を保有せずに海外企業からリースしている。

世界との差と政府の支援策

NTTなどによると、25年9月時点で5000トン以上の大型敷設船は世界に56隻あり、フランスや英国、米国は自国企業でそれぞれ10隻前後を保有する。今後、生成AIの利用拡大で海底ケーブルの需要はさらに拡大する見込みだ。米SNS大手のメタは、米国、インド、ブラジル、南アフリカなどを経由して5大陸を結び、世界最長となる5万キロ・メートルの敷設を計画している。日本勢は仏米のライバル企業に比べて受注や工期の制約が大きく、競争上の不利が予想されていた。

政府は、6月に成立した改正経済安全保障推進法に基づき、民間企業が調達する敷設船への財政支援を進める。総務省は来年度予算の概算要求で、建造費の50%を補助する事業を盛り込んだ。金額を示さない「事項要求」としている。NTTとKDDI、NECは老朽化した船の更新や新造船を検討する。

最新鋭の敷設船の建造費は1隻当たり400億~500億円前後に上り、資材価格の上昇で「10年前の2~3倍に高騰している」(通信大手関係者)という。海底ケーブルの敷設事業は需要の変動が大きく、敷設船は安定的な稼働を見通しにくい面があった。政府からの財政支援があれば、民間企業が自前で建造・購入しやすくなる。

安全保障上の重要性と今後の課題

海底ケーブルは安全保障上の観点から重要性が一段と高まる。ここ数年、北欧のバルト海や台湾周辺で、ロシア、中国の関与が疑われる切断事件が相次ぎ、各国は政府レベルで整備体制を強化している。NTTの敷設船「きずな」の桜井淳船長は「大型台風による被害や敷設需要の高まりで、日本近海での海底ケーブルの工事の頻度は数年前と比べ5割増となった」と話す。

政府が7月に取りまとめた成長戦略の工程表で、40年度までに海底ケーブルの整備や敷設船建造に官民で2・4兆円を投資する方針を盛り込んだ。AI・半導体や防衛産業などと並び情報通信を「戦略17分野」に定め、海底ケーブルはその重要品目に位置づけられる。経済産業省も来年度の概算要求で約187億円の関連費用を計上した。

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ただ、現在、国内で商用の大型敷設船を建造した実績のある造船所は、三菱重工業下関造船所(山口県)のみとされ、最後の建造実績は1999年まで遡るという。NTTの「きずな」を建造した造船所は既に経営破綻した。「現状では年1~2隻の敷設船を手がけるのが精いっぱいではないか」(政府関係者)との見方もある。