国際エネルギー機関(IEA)は10月に公表した「世界エネルギー見通し2023」で、電気自動車(EV)の販売が急速に伸びているものの、ガソリン車の需要は2030年まで堅調に推移するとの分析を示した。同報告書は、現在の政策や市場動向を基に、世界のエネルギー需給を長期的に展望するもので、今回の見通しではEVの普及が石油需要に与える影響は限定的だとしている。
EV販売は急増も、ガソリン車が依然主流
IEAの予測によれば、2023年の世界のEV販売台数は前年比35%増の約1400万台に達し、新車販売に占めるEVの割合は18%に上昇する見込み。しかし、ガソリン車(ハイブリッド車を含む)の販売台数は依然として約6000万台と、EVの4倍以上を維持する。IEAは「EVの成長は目覚ましいが、ガソリン車の絶対的な台数は当面高水準で推移する」と指摘する。
特に新興国や途上国では、充電インフラの整備遅れや価格の高さから、ガソリン車の需要が根強い。IEAの試算では、2030年時点でも世界の自動車保有台数の約8割は内燃機関車が占めるとされ、石油消費への影響は限定的となる。
石油需要のピークは2030年ごろか
一方、IEAは世界の石油需要が2030年ごろにピークを迎え、その後は減少に転じるとの見方を示した。EVの普及に加え、再生可能エネルギーの拡大やエネルギー効率の改善が寄与する。ただし、ピーク後の減少ペースは緩やかで、2030年時点の石油需要は2022年比でほぼ横ばいの日量1億300万バレル程度と予測される。
IEAのビロル事務局長は声明で「クリーンエネルギーへの移行は加速しているが、化石燃料の需要がすぐに減少するわけではない。政策のさらなる強化が必要だ」と述べた。実際、2023年の世界の石油需要は過去最高の日量1億200万バレルに達する見込みで、航空需要の回復や石油化学分野の伸びが押し上げ要因となっている。
ガソリン車の排出削減も課題
ガソリン車の需要が続く限り、運輸部門からの二酸化炭素(CO2)排出量は高止まりする。IEAは、内燃機関車の燃費改善やバイオ燃料の活用など、既存車両の対策も重要と強調する。報告書では、2030年までに世界の自動車燃費を2022年比で20%改善できれば、CO2排出量を年間5億トン削減可能と試算する。
日本政府は2035年までに新車販売を全て電動車(EV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、ハイブリッド車)とする目標を掲げるが、IEAの分析は、ガソリン車が依然として市場の中心であり続ける現実を浮き彫りにしている。
自動車メーカーの戦略に影響
こうした見通しは、自動車メーカーの戦略にも影響を与える。トヨタ自動車はハイブリッド車や水素エンジン車など多様な技術を追求し、EV一本槍ではない姿勢を取る。IEAのデータは、短中期的にはガソリン車の需要が無視できないことを示しており、各社の投資判断に材料を提供する。
一方、テスラやBYDなどEV専業メーカーは、急速にシェアを拡大している。IEAは、EVのコスト競争力が向上し、2025年ごろにはガソリン車との価格差が縮まると予測。これにより、2030年代にはEVが新車販売の過半数を占める可能性もあるとしている。



