日立製作所(日立)とエネウィルは2026年8月5日、系統蓄電池に蓄えられた再生可能エネルギー電力が持つグリーン価値の証明と、それを用いた売電事業で協業を開始したと発表した。蓄電池を介して供給される再エネ電力の環境価値を正確に証明・可視化する新たな仕組みを構築する。
背景と課題
系統蓄電池の導入が広がる一方で、そこに蓄電された再エネ電力の環境価値の担保は今後の課題となっている。送配電網を流れる通常の電力と再エネ電力が同じ蓄電池に充電された場合、現行システムでは放電された電力のどの部分が再エネ由来であるかを厳密に追跡・識別できない。そのため、蓄電の過程で再エネ本来の環境価値が失効し、需要家へ適切に引き継がれないことが想定される。
現在、再エネ電力の受給に対して、同時性(アワリーマッチング)や同地性(供給可能性)などのデータ情報をより厳格に管理・運用する新しい国際基準が検討されている。この対応に向け、蓄電池を経由した電力を時間軸や地域軸で正しく計測し可視化する仕組みが求められている。
協業の内容
今回の日立とエネウィルの取り組みでは、エネウィルが北海道名寄市内に保有・運用する「名寄1蓄電池」(出力1999kW、容量8128kWh)に、五常ホールディングスが運用する北海道発電所(出力1500kW)で発電した電力を充電した。蓄電池に充電された電力は、電力需要の多い時間帯にタイムシフト供給され、近隣の4カ所の施設で消費される。
この名寄1蓄電池に蓄電する北海道由来の電力を、日立が開発した「Storing RE」でトラッキングすることで、環境価値を可視化する。Storing REは、製品やサービスの製造・運用に使用される電力が100%再エネ由来であることを証明する日立のデジタルサービス「Powered by RE」を機能拡張したもの。発電・充放電・受電の各データをトラッキングでき、第三者認証機関がこれを客観的に認識する仕組みもサービス内に内包することで、環境価値を客観的に証明できるという。
技術の仕組みと今後の展望
Storing REは30分単位の受給データと、蓄電池の充放電データを30分単位で収集し同一の情報基盤で一元管理する。情報基盤上で発電、充放電、および受電の各データを時間単位で紐付ける独自のトラッキング技術によって、蓄電池内に通常電力と再エネ電力が混ざり合った場合でも、時間ごとの充放電履歴と受給データを照合することで再エネ由来の電力受給量を正しく算定できるという。
これにより、アビトラージスキームにおいて電力受給に時間差が生じた場合でも、データの不一致、消失・二重計上を未然防止し、「再エネ由来であること」を厳密・適切に管理・運用できる。これらの状況はスマートフォンなどからも確認可能だ。
今後、日立とエネウィルは、今回構築した仕組みが次世代グリーン電力システムの基盤となるよう取り組みを推進する方針。エネウィルが有する系統用蓄電池の実績と運用ノウハウに日立の技術を融合し、現状の収益モデルにグリーン付加価値を提供することで蓄電池を活用した電力事業の高度化と収益化を図るとしている。
また日立はPowered by REおよびStoring REが持つ再エネ価値トラッキング機能に、AIによる発電量予測、需要予測、蓄電池劣化予測、市場価格予測を組み合わせることで、環境価値と経済価値の両方を最適化する運用を実現する「HMAX Industry」としての国内外への販売を目指す方針だ。



