長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが7月上旬、約30年ぶりの高水準となる2.900%を記録した。高市早苗政権が公表した「骨太の方針」の原案の書きぶりによる「骨太ショック」が一因と指摘されたが、BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「グローバルな環境が変わり、世界が『高インフレ、高金利』の時代に入った」ことこそが長期金利上昇の本質だと説く。
30年間の金利動向を俯瞰する
河野氏は、冷戦終結後の1990年代から2010年代半ばまでを「低インフレ、低金利」の時代と位置付ける。グローバル化の進展により、先進国企業は新興国の安い労働力と自社の経営ノウハウや技術を組み合わせ、国際的なサプライチェーンを構築。世界規模で供給能力が拡大し、プラスのサプライショックが発生して物価上昇が鈍化、長期金利も低下傾向をたどった。
脱グローバル化と地政学の時代へ
しかし、グローバル化や金融自由化などの新自由主義的政策は経済格差を拡大させ、リーマン・ショックを引き起こした。2010年代後半からは先進国で社会エリートへの反発や脱グローバル化の動きが広がり、国際秩序の不安定化とともに「地政学の時代」に移行。コストがかかっても国内や友好国に生産拠点を置く傾向が強まり、コロナ禍で財政が膨張。その後も経済安全保障や防衛費増加で財政拡張が続き、「高インフレ、高金利」の時代に突入したという。
日本国内の視点
河野氏は、30年前の1996年は事実上のゼロ金利政策が始まり、翌97年には山一証券の破綻など金融危機が発生した年で、長期金利が急低下し低成長・ゼロインフレの時代に突入する直前だったと指摘。同じ水準に戻ったことは、ゼロインフレの時代が終わったことを意味すると述べている。
日本銀行の黒田東彦前総裁による異次元緩和の効果については「極めて小さかった」と評価。金融緩和策は長期にわたったが、インフレ期待や実体経済への影響は限定的だったと分析している。
今後の展望
河野氏は、世界が高インフレ・高金利の新たなフェーズに入った以上、日本もその流れから逃れられないと強調。財政規律の重要性や、金融政策の正常化が必要との見解を示している。



