島根県出雲市出西地区で、約400年前からこの地だけで細々と栽培されてきた「幻の生姜」と呼ばれる「出西しょうが」。生産者の田口裕一郎さん(56)がハウス栽培を導入し、安定した収穫を実現している。
7月下旬、むせかえるような熱気のこもるビニールハウスで、田口さんが青々と葉の茂る茎を引くと、ほんのりと紅が差した白い生姜が土の中から姿を現した。上品な香りが鼻腔をくすぐる。
滑らかな口当たりとキレのある辛み
出西しょうがは、一般的な生姜より繊維が少なく、口当たりが滑らかで、キレのある辛みが特徴。そのまま食べるとシャキッとした歯ごたえを味わえる。夏から秋にかけて収穫され、県内外に出荷される。
出雲平野は、中国山地を下って日本海に注ぐ斐伊川の下流域に広がる。田口さんは「川が運ぶ砂地ときれいな水が唯一無二の風味を育む」と胸を張る。
ハウス栽培で安定供給を実現
出雲市生まれの田口さんは、地元の自動車関連会社などで働く中で農業への関心が高まり、2012年に就農。翌13年に農園を開き、花や野菜の栽培を始めた。生姜も露地で育ててみたがうまくいかなかった。
生姜に本腰を入れたのは21年頃。露地栽培に取り組んだ数年間は不作だったが、24年からは地区で初めてハウス栽培を始めた。温度の調節機能や散水機器を備えたハウスは管理がしやすく、安定して収穫できるようになった。現在はハウス4棟計12アールと露地8アールで栽培する。
伝統の生姜糖を守る
生姜の搾り汁と砂糖を炭火で煮詰めて作る「生姜糖」は、徳川将軍家に献上されたと伝わる伝統菓子。1715年創業で、生姜糖を製造販売する出雲市の「來間屋生姜糖本舗」は、田口さんの生姜を多く使う。來間久社長は「生姜糖の味を守る上で潤沢な供給は心強い」と話す。
7農家が加盟する「出西しょうが生産協議会」の副会長も務める田口さんは、今年から新たにハウス栽培を始めた農家2人に自分の経験や技術を惜しみなく伝える。「生産者が手を取り合い、出西しょうがの伝統を残す」と誓う。



