京都府亀岡市の「ごみの学校」は、資源を再利用する循環経済の実現を目指して、企業向けの研修や実証事業、市民講座の開催などに取り組む株式会社です。代表の寺井正幸さん(36)は、「ごみについての仕組みを分かりやすく伝え、関心を高めたい」と語ります。
動脈産業と静脈産業の課題
環境分野では、経済活動を血液の循環に例えて、製品を製造、販売する側を「動脈産業」、役目を終えた製品を回収、処理、再生する側を「静脈産業」と呼びます。
環境省によると、国内のごみの総排出量はこの20年ほどで3割減りました。ただ、リサイクル率は20%程度にとどまったままです。動脈に比べて静脈の社会的、経済的な価値が低く、資源がうまく循環していないのです。
多くの企業は、製造段階で資源の循環まで考えることができていないと思います。また、自治体によってごみの分別ルールが異なり、市民の間でもごみへの意識に差があるなど、それぞれに課題を抱えています。これら3者が歩調を合わせて、静脈の価値を高めていく必要があるのです。
「ごみの先生」としての歩み
自然に恵まれた地域で育ち、「この環境を守りたい」という思いがありました。大学を出て就職した産業廃棄物処理会社での仕事は楽しかったけれど、業界の保守的な体質や社会の偏見を感じる場面もありました。
業界を取り巻く現状を変えようと、専門家らと一緒に、最新の知識などを分かりやすく伝えるインターネット番組を制作しました。市民の勉強会に招かれてお話をしているうちに、「ごみの先生」と喜ばれるようになりました。人前で話す機会が増え、2021年に、ごみや資源循環を考えるSNSのコミュニティー「ごみの学校」を始めました。
そこでの出会いが縁で、民間団体の海洋環境保全プロジェクトに関わり、海洋ごみなどを遊びながら学べるカードゲームを監修しました。企業や自治体からも依頼が入るようになり、就職して10年の節目に独立し、「ごみの学校」を会社として設立しました。
企業研修と実証事業
取り組みの一つが企業向けの研修です。アパレル会社では、リサイクル会社の視点で古着を「廃棄」「中古販売」「再生」に仕分ける作業を体験してもらいました。作り手たちに、資源循環に何が求められるかを気づいてもらうことが狙いでした。デザインや素材がもつ課題について考えてほしかったのです。
あるコーヒーチェーンは客にタンブラーの持参を勧めていて、どのように持参を促すかを考えるイベントでお話をしました。参加した学生の意欲的な提案に、従業員は刺激を受けた様子でした。
昨年には、亀岡市や、愛知県の自動車部品メーカーなどと連携し、市民から回収したプラスチックごみを部品に再生する実証事業を始めました。企業、自治体、市民の壁を取り払い、資源循環の実現を目指す試みと言えます。
亀岡市との協定と今後の展望
ごみの価値観を見直し、資源が循環できる社会の仕組みに変えたいと考えています。寺井代表と副代表の2人で運営し、イベントなどの業務には、取り組みに賛同する外部スタッフが協力します。取引先は飲食やアパレル、製造などの大手企業が中心。フェイスブックのグループ「ごみの学校」には3000人以上が参加しています。
2024年7月、プラスチックごみゼロを目指す亀岡市と、環境パートナーシップ協定を締結。市内の資源循環の取り組みを紹介するウェブメディアを運営したり、体験型の観光ツアーを開催したりしています。
寺井さんは1990年、京都府亀岡市出身。兵庫県立大環境人間学部を卒業後、大阪府高槻市の産業廃棄物処理会社を経て、2023年に「ごみの学校」を起業。ごみに関する歴史や資源化の仕組みなどを語るポッドキャスト番組「ひらけごみ!」を配信中です。



