硤合憲三氏、ノーベル化学賞受賞 35年以上の研究生活に同僚も祝福
硤合憲三氏、ノーベル化学賞受賞 35年超の研究生活に祝福の声

生命の謎に迫る化学的な現象を発見した東京理科大名誉教授の硤合憲三(そあいけんそう)さん(76)のノーベル化学賞受賞が決まった。硤合さんは1981年に東京理科大理学部の専任講師に就任し、その後は35年以上、同大一筋で研究に打ち込んできた。

「硤合反応」が医薬品製造に貢献

授賞理由になった「硤合反応」は、手の左右のように、鏡映しの関係にある2種類の有機化合物がそれぞれ触媒となって自己増殖する際、割合が少しでも片方に偏れば、一方ばかりが増えて偏りがより大きくなる反応だ。反応を繰り返せば、例えば二つの分子の比率が最初は「51対49」とほとんど同じだったとしても、最終的には一方がほぼ100%になりえる。高純度で安全な医薬品を製造するときに役立つとされる。

同僚や学生から寄せられる祝福の声

早稲田大の柴田高範教授(60)は、硤合反応を有名科学誌「ネイチャー」に論文発表した95年当時、研究室にいた唯一の助手だった。普段は物静かだが、飛躍的によい結果が出たときは表情が一変した。「あまり感情を表に出さないのに、本当にうれしそうな顔になった」と振り返る。

実験を支える学生にも気遣いを忘れず、常に研究室で声をかけ「厳しく言うことがあっても、すぐにクスッと笑える話をしてその場を和ませる。周囲に気を使う先生だった」と話す。論文掲載が決まった際には、研究室の学生十数人と祝杯を上げた。「お祝いの席でも先生は『これからが始まりだ』と話し、次にやることを考え、反応の完成形を目指していた」という。

硤合さんの下で助手になり、20年以上研究をともにした東京理科大の川崎常臣教授(50)は「優しい先生で、細かいところに気がつき、行き詰まらないように研究を進める迫力があった。今回の受賞決定は一緒に研究した一人として、非常にうれしく思う」と祝福した。

学生時代の指導者が語る人柄

硤合さんが東京大大学院博士課程2年だった頃、大学の卒業研究で直接指導を受けた東京科学大の鈴木啓介特命教授(72)は「兄のような存在で、まだ実験のやり方がわからなかった私にとつとつと説明し、時に面白いことを言いながら的確に指導してくれた」と語った。研究の合間には一緒にサッカーも楽しみ、「学内のスポーツ対抗戦に向けて『研究もスポーツも負けるな』と励まされ、研究と変わらず黙々と取り組んでいる姿が印象に残っている」と懐かしんだ。