細胞内の成分を分解する「オートファジー」の研究が、老化や健康長寿の分野へと広がっている。2016年のノーベル生理学・医学賞受賞から10年が経過し、基礎研究から社会実装への歩みが進む中、オートファジーにブレーキをかけるタンパク質「ルビコン」を発見した吉森保・大阪大学特任教授が、その可能性と壁を語った。
老化とオートファジーの関係
吉森氏は、年を取ると多くの生物でオートファジーが低下し、これが老化の主たる原因の一つになると説明する。老化は複雑でオートファジーだけでは説明できないが、動物実験では、オートファジーが下がらなければ加齢に伴う病気の発症が抑えられることが分かっているという。
ルビコンの発見と意義
ルビコンはオートファジーにブレーキをかけるタンパク質で、多くの組織では年を取ると増加し、オートファジーが下がることを吉森氏は見つけた。動物実験では、ルビコンを抑えるとオートファジーが下がりにくくなり、加齢に伴うさまざまな病気の発症が抑えられた。ルビコンの増加がオートファジー低下を通じて老化に関わるという因果関係を示せた点に、大きな意味があると吉森氏は強調する。
社会実装への展望
吉森氏は、当初から社会実装を考えていたわけではなかったが、研究が進むにつれて人間への応用につながりそうだと感じるようになったという。現在は創薬や生活習慣、健康食品への応用に取り組んでおり、オートファジー研究が健康長寿を暮らしに届けるための可能性と壁を模索している。



