猛暑や豪雨などの異常気象と気候変動の影響を調べる「アトリビューション(帰属)科学」が急速に発展している。いまや、原因となる温室効果ガスの排出と被害を結びつけ、「誰の排出がどれだけ被害を起こしたのか」まで示そうとしている。気候訴訟や途上国の損失と被害を救う動きに新たな展開をもたらすかが注目される。
帰属科学の進化と代表的な研究成果
帰属科学の代表例が、気候変動によって特定の熱波や豪雨がどれだけ発生しやすくなったかを調べる「イベント・アトリビューション」だ。人間活動による温暖化がなかった仮想世界と現実世界を比較し、発生確率や豪雨の強さなどの違いを分析する。
たとえば、7月の日本の猛暑について、東京大や京都大の研究者でつくる「極端気象アトリビューションセンター(WAC)」が分析。温暖化がなかったと仮定した場合、発生確率は1万年超に1回しか起こり得ないレベルで、「温暖化の影響がなければ、発生しなかった」とした。
研究手法の発展と残された課題
最初の例が英国チームによる2003年の欧州熱波の分析で、これまで難しかった猛暑や豪雨など個別の異常気象と温暖化の関連を定量的に示せるようになった。研究手法はこの10年ほどで急速に発展し、特に熱波については信頼度が高い。
全米科学アカデミー(NAS)の2026年報告書も、極端な高温や寒さ、大規模な豪雨の帰属科学は比較的成熟していると評価した。一方、局地的な雷雨や複合災害などは、モデルの解像度や観測データに限界があり課題が残るという。
排出源から被害までつなぐ新たな研究
研究の射程はさらに広がっている。企業や国家など特定の排出主と被害を結びつける試みが進み、排出源から温暖化、被害までを一貫して追跡する研究が行われている。科学は寄与を示すが、責任分担は政治や司法が判断する領域だ。