奈良県大和郡山市にある奈良学園中学校・高等学校は、昨年度、中学3年生の英語教育にタブレット端末を活用した「デジタル多読」プログラムを導入した。生徒は好きなジャンルや自分のレベルに合った本を簡単に検索して読むことができ、読んだ語数や1分間に読める語数が伸びている。同校では、英語への苦手意識を軽減するためのさまざまな授業の試みも行われている。
授業改革の背景と洋楽歌唱の導入
英語科の北畑徳太教諭は、4年前に赴任した際、入学間もない中1生の約9割が英語に苦手意識を持っていると回答したことを明かす。「小学校に英語教育が導入された影響で、入学時点で既に英語に苦手意識を持つ生徒が増えているのかもしれません。英語を学ぶのは楽しい、学習を続けていけばできるようになるという感覚を中学生のうちに身に付けてほしい」と話す。
中学の英語科教員の間では授業改革の必要性が認識され、数年前から取り組みが始まった。北畑教諭は中1の授業冒頭に洋楽を歌う活動を導入。ロックやポップス、アニメの歌など1か月に1回程度のペースで曲を変え、毎回実施した。他の教員にも働きかけ、全クラスに広がった。生徒からの好評を受け、中2までの予定だったが、高校でも継続している。
少人数制授業と発信力向上の取り組み
中1・中2の英語では、1クラスを2分割した少人数制授業を実施し、生徒の積極的な参加と教員の指導が行き届くようにしている。週1コマの英会話では、ネイティブと日本人教員によるチームティーチングで丁寧な指導を行っている。
2年前からは、レシテーション(暗唱)とスピーチにも取り組む。中1では50語程度の英文暗唱、中2では身近なテーマでの英語スピーチ、中3では自分の意見を語るスピーチへと段階的にステップアップし、高校でのオンライン英会話につなげる。
デジタル多読の導入と効果
昨年度、中3生向けに教材会社が提供する「デジタル多読(eステ)」プログラムを導入した。同校は2010年から英書多読に取り組んできたが、図書館への移動時間などの課題があった。北畑教諭が担当して見直し、デジタル多読を採用した。
授業の始めに10~15分間の多読時間を設け、ジャンルやレベルで簡単に検索でき、表紙から視覚的に選びやすいのが特徴。辞書を引かずに読み進めるルールで、絵本レベルから自分のレベルに合わせて語数の多い本や語彙・文法の難しい本へレベルアップする。人気なのは、海外の同年代の日常生活を描いたシリーズや科学分野の本、著名人のノンフィクションだという。
取り組み状況は「多読手帳」に記入し、教員がチェック。長期休み中には「多読マラソン」と題した宿題を課し、今年の春休みには「5000語を読む」「15冊読む」「1日20分の読書を1週間継続」の三つの課題から一つを選んで取り組んだ。
北畑教諭は「中3は『難しい』『苦手だ』という意識が出てくる時期。教科書にないストーリー性のある本に出合い、楽しみながら英文を読んでほしい」と話す。高1生の中には、この1年2か月で読んだ語数が10万に達した生徒もいる。英語検定GTECの結果では、1分間に読める語数が中3の夏から冬にかけて学年平均で80から100へ向上した。
生徒の声と今後の展望
志村綾菜さん(高1)は「デジタル多読では、文章の内容を雰囲気で理解するため、読む速度が向上しました。洋楽の歌唱では、ネイティブの発音が分かるようになりました」と話す。八島孝憲君(高1)は「多読などで英語に触れるうちに、英語って奥深いのかもしれないと思い始め、興味を持つようになりました。今では僕の聴く音楽の半分は洋楽です」と語る。
同校は高1の夏休みに希望者制のシンガポール研修を実施しており、今夏も定員40人が埋まっている。参加者が必ずしも英語の成績上位者ばかりではないという。北畑教諭は「英語が得意でなくても、学ぶことや海外に興味がある生徒が増えている。中学での取り組みが苦手意識を払拭し、海外へ飛び出そうという勇気を育てているならうれしい」と手応えを語る。志村さんと八島君も今夏の研修に参加予定で、意欲的に交流を望んでいる。



