愛知・名古屋アジア競技大会は2日、テコンドーの新種目「バーチャルテコンドー」を実施した。選手がVRゴーグルとモーションキャプチャーを装着し、仮想空間で対戦する競技で、アジア大会では初の採用となる。
男女混合で戦う新競技
バーチャルテコンドーは、選手がVRゴーグルをつけ、体にモーションキャプチャーを装着して戦う。1ラウンド1分で、2本先取。仮想空間で相手の体力ゲージを削り、ノックアウトするか、時間内に多く削った方が勝ちとなる。
会場の豊橋市総合体育館には四角形のコートが2つ用意され、選手は装備を身につけて入場。VRゴーグルに映る相手と戦い、自分の動きをアバターに反映させる。観客席の頭上には大型モニターが4枚設置され、アバターの試合映像が映し出された。
格闘技でありながら男女混合で行われ、1回戦4試合のうち2試合で女子選手が勝利した。体格差は競技に影響しないとされ、アバターの体格は全員同じ。モーションキャプチャーは「コントローラー」のような役割を果たし、足や手の動きが判定に使われるという。
試合進行に課題
一方で、観客にとっては見づらい面もあった。モニターとコート上の選手を同時に見ることが難しく、アバターの動きは単調に感じられる。選手の動きとアバターの動きが連動する面白さを、同時に観戦できる仕組みは整っていなかった。
試合進行にも課題が残った。選手はコートに上がってから装備を身につけるため、入場から試合開始までに時間がかかり、長い場合は5分以上の準備時間を要した。試合中に機器の調整が入ることもあり、決勝戦は予定より約1時間遅れて午後0時22分に終了した。
日本代表として出場した中島美鳳は「選手も試しながらここまで続けてきた。大会運営も同じようなところがあったのではないか。選手としても、お客さんを待たせていることも感じた」と語った。
競技が救った選手生命
課題はあるものの、この競技に救われた選手もいる。金メダルを獲得したフィリピン選手に準々決勝で敗れた鈴木颯(25、新宿クラブ)だ。
鈴木は元々、通常のテコンドーで世界ジュニア選手権や全日本学生選手権に出場するなど将来を期待された選手だった。しかし、「大学1年でてんかんを発症してキョルギを引退して、4年生では悪性腫瘍が見つかり、『もういいかな』と(プムセも含めて)引退しました」という。
指導者として歩み始めた中で、バーチャルテコンドーを昨年から始めた。「試合に臨む気持ちは、キョルギやプムセと全く変わらない。バーチャルでも同じ緊張感で臨んでいます」と明かし、「バーチャルでも、見ている面白さがある。キョルギもプムセもバーチャルも大好きなテコンドー。全てを経験してきた自分だからこそ、その魅力を広めていきたい」と語った。