テレビ朝日の西新社長、電通の松本千里社長、博報堂の名倉健司社長が7日、ビデオリサーチ主催の「VR FORUM 2026」に登壇し、コンテンツやIPを起点にしたファンダムの可能性について、それぞれの立場から見解を語った。
テレビ朝日は深夜帯をIP開発の戦略ゾーンに
テレ朝の西社長は、同社が掲げるIPの多面的な展開について説明する中で、「23時台以降、深夜帯をIP開発の戦略ゾーンと位置づけておりまして、すでに様々な取り組みを仕掛けております」と明かした。
具体例として、世界展開を見据えた深夜時代劇プロジェクト『真田十勇士』、18歳以下の若者を対象にした『ミュージック甲子園』、長年育ててきた新日本プロレスのIP展開を紹介。放送枠を単に番組を届ける場として捉えるのではなく、そこから配信、海外、イベントなどへ広げていくIPの“出発点”として活用していく考えを示した。
「ファンダムプラットフォーム」構想と推し活の活用
さらに西社長は、コンテンツを視聴者と一緒に育てていく“推し活”にも注目。様々な番組のファンクラブをまとめて運営する「ファンダムプラットフォーム」の構想を明かし、そこでしか見られないオリジナルコンテンツの配信、番組参加、グッズ展開、プレミアムイベントへの招待などを想定している。ファンダムを軸に、一つのIPをアニメ、実写、ゲーム、音楽、グッズ、リアルイベント、海外展開へと広げ、「IPの価値を最大化させていく」ことを目指すという。
電通・博報堂は「生活者の行動」と「界隈」に着目
西社長の話を受け、電通の松本社長は「ファンダムというのは、我々にとっても非常に重要なテーマだと思っています」と反応。「言うまでもないですけど、コンテンツには人を動かす力があります」と強調した。
広告主のコンテンツへの関わり方についても、「単に協賛したりとかタイアップしたりするだけではなくて、その熱狂にどう参加して、生活者との関係をどう深めていくのか、そこまで含めてコンテンツマーケティングを考えるようになってきている」と説明。
その効果を測る上でも、「何人が見たのかだけではなくて、コンテンツによって生活者の気持ちや行動がどう動いたのかまで捉えていくことが大事だと思っています」と述べ、視聴者数だけでは測れないコンテンツの価値に言及した。
10代の8割に「推し」や「所属している界隈」
博報堂の名倉社長は、生活者の“好き”を軸にしたつながりに注目する。
同社の生活者発想技術研究所「偏愛会議」の調査として、「推しがいる、所属している界隈がある」と答えた人が全世代で半数を超え、「10代ではなんと8割に上ります」と紹介。生活者同士の「心地よい緩いつながり」で構成される“界隈”について、すでに市民権を得て多様化していると分析し、「こうした好きを軸にしたつながりが消費を動かす大きな力になっています」と語った。
一方で、その“好き”を大きな一つの集団として扱うことには慎重な姿勢も示す。「界隈ごとに大切にしていることも、心地よい距離感も違ってまして、一括りにされること自体を好まない方が多い」と指摘し、それぞれのコミュニティーに対する理解やリスペクトの重要性を訴えた。
テレビ局が深夜帯から新たなIPを生み出し、その先にファンダムとの継続的な接点を作る。一方、広告会社も“何人に届いたか”だけでなく、そのコンテンツが生んだ熱狂や行動、コミュニティーそのものに価値を見いだしている。放送、広告双方にとって、“ファンとどうつながり続けるか”がコンテンツビジネスの重要なテーマになっている。