スマホの「充電80%止め」は本当に効果?実験で見えた意外な結果
スマホの「充電80%止め」は本当に効果?実験結果

スマートフォンのバッテリーを長持ちさせるため、充電を80%で止める設定を活用している人は多い。現在のスマートフォンには、80%で充電を止める設定を用意している機種が多い。この設定は、スマートフォンのバッテリーを長く使う上で有効だとされている。

一方で、20代のスマホを半年間充電し続けたら、持っても持たなくても差はわずかだった、という実験結果も出ている。スマートフォンの充電を100%より前に止める設定は、気休めなのか、それとも守る価値があるのか。

急速充電と劣化の関係を検証

スマホのバッテリーは、使うほど満充電で入る量が減っていく。iPhoneの設定に出る「最大容量」は、新品を100とした今の値だ。減り方は使い方で変わる。Appleは、製造からの時間に加えて温度の履歴と充電パターンが関わると説明している。冒頭に挙げた3つの方法は、いずれもこの減り方を遅らせるためにある。ただ、どこまで確かめられているかは、3つそれぞれで異なる。

YouTubeチャンネルのHTX Studioが2025年11月に公開した実験は、iPhone 12とvivoのiQOO 7を10台ずつ使い、5%まで使っては100%まで充電する動作を装置で167日間繰り返した。1台あたり500サイクル回した。容量100%分の充放電を1サイクルと数えるので、1日1サイクル使う人なら約1年4カ月分にあたる。

結果として、充電速度でほとんど変わらなかった。120Wで充電したAndroidの群は容量の8.5%、18Wの群は8.8%を失い、速い方がわずかに少なく減った。iPhoneは急速充電の群が12.3%、低速充電の群が11.8%で、差は0.5ポイントだった。

充電の速さと劣化の関係は、バッテリーの研究でも調べられている。フランスの研究チームが2021年に学術誌Applied Energyに発表した論文(Applied Energyの論文)では、材質の異なる3種類の市販バッテリーに、充電電流と充電終止電圧、温度を変えて充放電を繰り返した。2種類は電流と電圧を上げるほど劣化が増え、残る1種類はほとんど変わらなかった。大きな電流で済むかどうかは、バッテリーの材質と設計で分かれる。

スマートフォンは、充電器の出力をそのままバッテリーに流し込んではいない。バッテリーの状態に合わせて端末側が電流を制御していて、Appleも満充電に近づくと電流を絞ると説明している。

その制御のもとで120Wと18Wを半年間比べたのが、HTX Studioの実験だ。実験した2機種がスマホ全体を代表しているわけではないが、この実験では差は1ポイントに満たなかった。急速充電を使わなければ、充電に時間がかかるのは確実だ。わざわざ避ける理由は見当たらない。

満充電のまま置くのは高温時に注意

「満充電になっても差しっぱなしだと、電気を流し続けてバッテリーが済む」という説は、今のスマホには当てはまらない。Appleのサポートページによれば、iPhoneはフル充電になると充電を自動的に止め、残量が95%を下回ると再開する。Galaxyも100%で充電を止め、以降は充電器から端末へ直接給電して、95%まで下がると再充電する、とサムスン電子は説明している。

Appleは先のサポートページで「できれば、フル充電された後はiPhoneを充電器から外しておきましょう」と勧め、フル充電のまま過ごす時間を短くする「バッテリー充電の最適化」を初期設定で有効にしている。差しっぱなしが安全なことと、満充電のまま長く置くのがバッテリーにいいかどうかは別の話だからだ。

では、満充電のまま置くとどれくらい済むのか。HTX Studioは電源を切った6台を1週間置いてみたが、容量は変わらなかった。もっとも、1週間は劣化の差が数字に出るには短い。メリーランド大学の研究チームは2021年、スマホ用に近いバッテリーを5社分使い、満充電後に放置(休ませる)時間を10分から24時間まで変化させ、温度も変えて比べた(Journal of Power Sourcesの論文)。

満充電のまま休ませる時間が長いほど、充放電1回あたりの劣化は大きかった。ただし25度では、休ませている間に充放電が減る分で相殺される程度の差にとどまった。差が開くのは温度が上がってからで、45度以上では長く休ませたバッテリーの方が日数で見ても早く減り、リチウムイオンバッテリーが劣化しやすい高温条件の55度では、10分だけ休ませたバッテリーに比べて寿命が約11分の1に縮んだ。満充電で置く時間が問題になるのは、温度が高いときだ。

夏の車内や充電しながらのゲームのように、熱を伴う満充電の放置は避けた方がいい。一方、室温で寝ている間に差しっぱなしにしても、この実験で劣化が速まった45度以上という条件からは遠いので、気にする必要はないだろう。満充電のまま置く時間を減らしたいなら、初期設定でオンになっている最適化充電が、起きる時刻に合わせて満充電を遅らせてくれる。

80%で止める根拠はあるが、守られるのは数ポイント

HTX Studioは、「30〜80%の間で使うのがバッテリーに一番いい」という説も試している。「30%まで減ったら80%まで急速充電する」を繰り返す群は、上限を80%に設定した上で、小まめに充電して30%を割らないようにしている人の使い方にあたる。500サイクル分の充放電を終えた時点で、容量の減りは5〜100%で急速充電した群よりiPhoneで4ポイント、Androidで2.5ポイント少なかった。減りは確かに抑えられていたが、大きな差ではない。

メリーランド大学の研究チームは2016年、スマホと同じ種類のバッテリーを、0〜60%、20〜80%、40〜100%の3つの範囲と、比較用の0〜100%で使い続ける実験を発表した(Journal of Power Sourcesの論文)。3つの範囲は使う幅がどれも60%分で、高さだけが違う。

40〜100%で使ったバッテリーが最も早く減り、0〜60%で使ったバッテリーは700サイクルを超えても容量の97%以上を保っていた。20〜80%で使ったバッテリーは、0〜100%で使ったバッテリーより、800サイクル後に約8ポイント多く容量を残している。しかし、放電の速さを上げてバッテリーが熱を持つようにすると、その8ポイントの差もほぼなくなった。

上限を下げる設定の根拠は、実機の実験とバッテリー単体の実験の両方にある。どちらも減りを遅らせる方向は同じだった。ただし守られる容量は約1年4カ月分の充放電で数ポイントにとどまり、バッテリーが熱を持つ条件ではその差も消える。その代わり、80%で止めればバッテリー切れは20%分早く来るというデメリットがあり、iPhone 17ならビデオ再生6時間分にあたる。

上限を下げる設定は、iPhone、Pixel、Galaxyのいずれにもある。

iPhone 15以降は「設定」→「バッテリー」→「充電」で、充電上限を80%から100%まで5%刻みで選べる。

Pixelの場合、6a以降で、「設定」→「バッテリー」→「バッテリーヘルス」→「充電の最適化」に80%制限がある。

GalaxyはOne UI 7.0以降の「バッテリーを保護」で「最大」を選ぶと、80/85/90/95%の上限を選べる。就寝中は80%で止めて起床直前に100%にする「就寝時間の保護」もある。

80%で1日が足りる人なら、上限を80%にして失うものはほとんどない。減らせる劣化は数ポイントでも、日々の不便がないなら使わない理由もない。85〜95%を選べる機種なら、足りない分だけ上げればいい。

一方、1日に80%以上使う人や、地震や停電に備えて常に残量を多く持っておきたい人は、100%充電のままで問題ない。最適化充電や就寝時間の保護は、起きる時刻に合わせて満充電にする機能で、夜中に災害が起きたときの残量までは保証しない。1年4カ月使って数ポイントの容量より、今夜の残量を優先する。それも一つの答えだ。

自分がどのように充電すればいいかは、設定画面のバッテリーの項目で1日の消費量を見れば分かる。上限は後からいくらでも変えられる。まず消費量を確かめ、それから決めればいい。