リビングラジカル重合の礎築く 中部大・澤本光男フェローの挑戦
リビングラジカル重合の礎築く 中部大・澤本光男フェローの挑戦

液晶テレビやインク、粘着剤の材料に使われる高分子(ポリマー)。小さな分子を鎖のようにつないだものだが、長さをそろえることで化学製品の機能を高める「リビングラジカル重合」という方法に注目が集まっている。その礎となったのが、中部大の澤本光男フェローの研究だ。新たな手法の開発や、産業化も進んでいる。

「不可能」とされた精密合成への挑戦

重合とは、たくさんの小さな分子が結びつき、より大きな分子をつくる化学反応のことだ。分子を鎖状に次々とつなげて成長させ、決まった長さの高分子を精密につくることを「リビング重合」と呼ぶ。

その歴史は70年前にさかのぼる。アメリカの研究者が1956年に「リビングアニオン重合」を開発した。電子を余分にもった分子(アニオン)によるもので、タイヤ用の合成ゴムなどに使われてきた。しかし、水や空気があると反応しないといった欠点があった。

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さらに効率よく多様な高分子素材をつくろうと、電子が足りない分子(カチオン)や、電子が1個だけ余った分子(ラジカル)によるリビング重合も研究されたが、長く実現しなかった。

ヨウ素で「リビングカチオン重合」を実現

この分野を大きく前進させたのが、70年代から京都大で「カチオン重合」に関する研究を続けていた澤本さんだ。「思い通りの構造や機能をもつ高分子の精密合成をしたかった」と話す。

さまざまな触媒で試し、反応を適度に進めるヨウ素が適していることを見つけた。「リビングカチオン重合」の成功例として84年に発表した。だがアニオンと同様に反応の条件が限られ、応用はあまり進まなかった。

ただ、この研究で触媒の設計方法がわかってきた。その手法を生かし、「リビングラジカル重合」にも挑戦する。

ラジカル重合の課題と「帽子」のアイデア

ラジカル重合は、プラスチック製品や化学繊維の生産など、産業界で広く使われてきた。

ラジカルは分子とつながり、つながった分子がラジカルとなることで、次々につながる。高分子をつくりやすいが、ラジカル同士がくっつくと反応が止まってしまう。長さがバラバラになり、高品質な高分子をつくるのが難しく、精密な反応には不向きとされた。

そのため、長さをそろえられるリビング重合の実現は期待されてきた。研究者らから成功報告もあったが、それらは特定の高分子をつくるための限定的な手法で、実用化につなげるのは難しいと考えられていた。

澤本さんらは、ラジカルに「帽子」を付けて暴走を抑えつつ、金属触媒が近づいた時だけ「帽子」を外してラジカルにさせる方法を実現しようと考えた。研究が暗礁に乗り上げかけて…

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