経済産業省の商務情報政策局長として5年近い任期を務めた野原諭氏が、異動前日となる8月6日夕刻に任期を振り返った。2021年10月に就任して以来、TSMCの熊本工場への補助金交付や、国策半導体会社・ラピダス設立などを手がけてきた。
5年という異例の任期が可能にした政策
霞が関の局長クラスは1~2年で異動するのが伝統的な人事慣行だが、野原氏は5年という異例の任期を得たことで、長期にわたる政策を推進できたと語る。もし2年任期だった場合、TSMCの熊本第2工場への支援決定(2024年2月)やキオクシアの北上工場への支援決定(同)、米マイクロン・テクノロジーの広島工場への支援決定(2025年9月)には行き着かなかったという。ラピダスも2023年9月の起工式で終わっていたと振り返る。
日本の弱点である半導体設計を強化するため、ラピダス製チップを想定した設計プロジェクト(キヤノン、富士通に委託)や後工程の自動化プロジェクトも、任期が2年を過ぎた後に実施された。野原氏は「時間を与えていただいたことでできたことは多かったのではないか」と述べる。
ラピダスへの思い入れとASML訪問
野原氏は「ラピダスは非常に思い入れがある」と語り、印象に残っている案件として、プロジェクト発表前の2022年のゴールデンウィークに、オランダのASML本社を訪ねたことを挙げた。ASMLはEUV(極端紫外線)露光装置を独占している。
野原氏は、担当者の変更による方針のブレが政策効果を生みにくくしている側面があると指摘し、「日本の行政システムの大きな課題だと思う」と述べた。また、毎年人事のヒアリングで続投を希望してきたことも明かした。



