脳の全容解明で汎用AI誕生か テレパシー実現への挑戦と倫理的課題
脳の全容解明で汎用AI誕生か テレパシー実現への挑戦と倫理的課題

人間の脳を未来の技術に生かす研究が加速している。次世代の人工知能(AI)やテレパシーのような意思疎通を実現させる試みだ。だが未知の領域には危うさも潜んでいる。

脳の全容解明で汎用AIが誕生か

人間の思考はどのように行われているのか。古代ギリシャ時代からの根源的な問いだ。19世紀以降の研究で、脳内では神経細胞が結合して複雑な回路を作り、電気信号をやり取りして記憶や学習などを行っていることが分かってきた。しかし、この世で最も複雑な構造物と呼ばれる脳は神経細胞が860億個もあり、それらが結合している場所は100兆を超える。どのような信号のやり取りで膨大な情報を処理しているのか現在も謎だ。

これを詳しく解明しなければ人間の知性の本質に迫れない。そこで全ての神経細胞の回路をスーパーコンピューター上で再現し、シミュレーションによって脳の全容解明を目指す研究が世界的に進んでいる。磁気共鳴画像装置(MRI)などで脳の膨大なデータを計測し、コンピューターの中にデジタルの脳を作るのだ。

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スパコン性能向上で2040年ごろ実現

理化学研究所の五十嵐潤上級研究員(計算神経科学)によると、米欧日中の各国で開発競争が激化しており、スパコンの性能が向上する2040年ごろに実現すると予想される。脳の基礎研究や病気の治療に役立つほか、最も注目されるのはAIへの応用だ。

AIは近年、計算量の増大で性能が飛躍的に向上したが、消費電力も大幅に増えてしまう問題に直面している。極めて効率的でエネルギー消費が少ない脳の特性を活用すれば、解決できる可能性がある。

効率的な脳の特性がAIを進化させる

五十嵐氏は「人の脳は進化の過程で大きくなったが、厳しい生存競争に勝ち残るため無駄な部分をそぎ落とし、効率の良さも獲得した。AIも脳を模倣し、同じ進化の道筋をたどるだろう」と予想する。

AIが脳の特性を獲得すると、多様な課題に柔軟に対応できる人間の知性と効率性を併せ持つ「汎用(はんよう)AI」の実現につながる。文明を一変させる革命的な次世代AIだ。各国が脳の全容解明にしのぎを削る理由がそこにある。

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