生成AIやスマートテレビの普及により、視聴者がテレビ番組やニュースを「探す」という行為そのものが変わり始めている。NHKと民放キー局からは、AIの回答だけで情報取得を終える「ゼロクリック型」の利用拡大によって、放送局が制作したコンテンツの価値が視聴者に届かなくなることへの危機感が示された。
総務省会合でヒアリング結果を報告
6日に開催された総務省の会合・放送政策委員会で、NHKと民放キー局5社を対象に8月24日から9月4日にかけて実施されたヒアリング結果の概要が報告された。放送事業者からは、スマートテレビや生成AIなど外部プラットフォームの普及が進む中、コンテンツの「見つけられやすさ」と、取材・検証に基づく情報であることを示す「信頼の帰属」を確保する必要性が指摘された。
テレビ画面が家庭に残っていても放送が選ばれるとは限らず、AIの要約や検索回答だけで情報取得を終える「ゼロクリック型」の利用も拡大しているとの認識が示された。
「プロミネンス」早期実施の意見と現実的な見方
こうした変化を受け、議論されているのが「プロミネンス」だ。公共的価値を持つ放送コンテンツなどを見つけやすくする仕組みで、ヒアリングでは「プロミネンスの実施は早いほうがよい」との意見が出た一方、「AIテレビ」が登場する時代には、「番組を探す手間自体が、消費者・視聴者目線ではやや現実離れしている」との見方も示された。
「リモコンをつけてチャンネルを選択する」時代から、生成AIがアルゴリズムでコンテンツを提示する時代へ変わり、プロミネンスの形も変化するとの認識だ。
良質なコンテンツの価値が届かない可能性
AIを巡っては、「確かな情報や良質なコンテンツを発信しても、十分に価値が届かない可能性がある」との指摘も。AIが偏った学習データで生成を進めることで、ネット空間の偏りが強まることへの懸念も挙げられた。
一方、放送局側もAIを資料作成の効率化やコンテンツ・CM制作、字幕制作、考査、AIアナウンサーなどに活用。生成AIが視聴者に代わってコンテンツを“選ぶ”時代に、放送局がどう存在感と信頼性を維持するかが課題となっている。