車に乗り込むと、阿岐本が「聖域に触れたのはまずかったなあ……」とつぶやいた。日村が車を出すと、「そうですね……」と応じた。
無線機は社長のアイデンティティー
阿岐本は「無線機は社長のアイデンティティーだって、伊達さんも言っていた。だから、譲れないだろうね」と説明した。日村は「はい」と短く返した。
今回の電器屋の件について、阿岐本は「思ったより根が深そうじゃねえか」と述べた。
手を引くかとの問いに阿岐本は
日村は思い切って「では、手を引きますか?」と尋ねた。しかし阿岐本は「ばか言ってんじゃねえよ。難しい問題だからこそ、やり甲斐があるってもんじゃねえか」と一蹴した。
日村が「はあ……」と応じると、阿岐本は「とにかく、お嬢の件といい、無線機の件といい、考えることが目白押しだな」と付け加えた。日村は密かに「頭の痛いことだ」と思った。