高校生によるサイバー攻撃への関与が相次いで報告されている。中でも、喫煙所検索アプリ「喫煙CLUB」を運営する喫煙フロンティア(横浜市)から会員情報約725万件を盗んだ攻撃に当時高校2年生の男が関与していた事件や、男子高校生が動画配信サービス「バンダイチャンネル」の会員約4万6800人分のアカウントを無断で退会させた事件は世間を大きく騒がせた。
同様の話題が広がるとき、よく聞くのが「罪があるならホワイトハッカーにすればいい」という論調だ。しかし、有識者はこの意見を「悩ましい」と受け止める。
セキュリティ事業を手掛けるセキュアスカイ・テクノロジーのCTOで、警察庁の少年向けセキュリティ教育事業「セキュリティ・キャンプ」運営体の代表理事を務める長谷川陽介さんは「単純に『ホワイトハッカーにすればいい』と言うのは違うと思う一方で、『一切させるべきではない』というのも極端」と話す。
「驚きはしない」——サイバー攻撃に年齢は関係ない
まず、喫煙CLUBやバンダイチャンネルの事件など、少年の関与が報じられたとき、率直にどう感じましたか。
長谷川さん(以下敬称略):あまり驚きはしませんでした。若いだけに周りが見えていなかった、何をやってよくて何をやってはダメなのかに触れられなかった——というか、そういうわいそうな面はあるのかもしれないと思います。
驚かないというのは、なぜ?
長谷川:セキュリティ技術に、年齢はあまり関係ありません。物的な犯罪なら体力や社会的な知恵が必要ですが、サイバーであれば若くても知識さえあれば実行できます。つまりどの年齢層でも同じことができてしまう状況があるので、「中学生だから」「高校生だから」という驚きはありません。
SNSでは「未成年のサイバー犯罪が増えている」という声もあります。実際に増えているのでしょうか。
長谷川:警察庁が毎年出している統計で、不正アクセス禁止法違反の検挙者数を見ると、低年齢層が極端に増えているということはありません。微増はありますが、目立つ形で増えているわけではない。全体像というより、個別の目立つ事例が目立つ形で報道されているにすぎないと思います。
「ホワイトハッカーにすればいい」は単純?
同様の事例が話題になると、必ずといっていいほど「ホワイトハッカーにすればいい」という声が出ますが。
長谷川:悩ましく思っています。単純な「すればいいのに」という声は違うだろうと思う一方で、「一切させるべきではない」というのも極端すぎると思っています。
(「すればいいのに」という視点に対しては)企業の立場で言えばリスクヘッジもありますし、悪いことをするような人材を採用したいか……と言えば、そんなことはないでしょう。
一方で「させるべきではない」という視点に対しては、「1回失敗したらもう二度と関与できない」のは教育としてどうなのかと個人的に思っています。若いころに周りが見えずに悪いことをしてしまったとしても、本人が真摯に反省して、きちんと世の中のために生かしたいという状態であれば、活躍できる場はあってもいいのでは。
また、我々の世代は、不正アクセス禁止法ができるかできないかというころからやっているので「過去は違法ではなかったが、今なら違法になる」行為もたくさんあります。実際に、そうした経歴からセキュリティ業界で活躍している人もいます。やっていることは変わらないのに、法律があったかなかったかの差でしかなく、難しさを感じることもあります。
一度過ちを犯した子どもが反省し成長したとして、実際に戦力になれるのか
長谷川:個人の資質によるのではないでしょうか。犯罪を犯したときの技術がまぐれの「ホームラン」だったか、きちんと積み上げた素質があるのかは、個別のケースでしかない。SNSでは「そういう人は欲しくない」という声もありますが、会社との相性もあるでしょうし、ケースバイケースだと思います。
CTOという、企業の経営側の立場からはどうでしょう。場合によっては「そういう人材は欲しくない」という本音もあると思いますが。
長谷川:正直なところ、採用面接で過去の犯罪歴を聞くかというと、聞きません。中学生のころに不正アクセス禁止法違反で補導されました、ということがあったとしても、我々がそれを判断できるかというと、きっとできない。結局は面接を通じて、本人が真面目に仕事に取り組みそうかどうかで判断せざるを得ません。



