米Adobeは7月20日(現地時間)、実験的なiPhone向けカメラアプリ「Project Indigo」に、生成AIを活用した画像編集機能「AI Playground」を追加すると発表した。不要物の除去やスタイル変換、AIによる写真の講評などをボタン操作で利用できる。Project Indigo 1.1の一部ユーザーを対象に、数週間規模の試験提供を開始する。
Project Indigoの概要とAI Playgroundの狙い
「Project Indigo」(以下Indigo)は、Adobeの研究開発チーム「Nextcam Team」が約1年前に公開した実験的カメラアプリである。フルマニュアル操作に対応し、一眼レフのような自然な写りと、コンピュテーショナルフォトグラフィ技術による高い画質を特徴とする。
バージョン1.1アップデートでアプリ内に新たに「AI Playground」タブを設け、生成AIによる編集機能を統合した。その狙いについて開発チームは「生成AIが撮影時点でモバイル写真家をどのように支援できるかを検証すること」と説明している。一般的な生成AI画像編集はテキストプロンプトを中心としており、意図した結果を得るまで試行錯誤が必要になりやすい。AI Playgroundでは、Adobeが調整したプロンプトをボタンやトグルに割り当て、複雑な指示を入力せずに主要な編集を実行できるようにした。
AI Playgroundの4つのセクション
AI Playgroundは「Object Editing」「Styles」「Photo Guidance」「Custom Edit」の4セクションで構成される。
Object Editing:背景の人物、電線やポール、フェンス、車両、ごみなど、写真内の不要物をカテゴリー別のトグルで指定して除去できる。削除したい対象をテキストまたは音声で追加指定することも可能。被写界深度を浅くして背景をぼかす機能も備える。
Styles:ペン画やインク画に彩色を加えた表現、ゴールデンアワー風のライティングなど、写真を多様なスタイルに変換するプリセット群。
Photo Guidance:写真の長所と改善点を講評し、編集案に加えて、構図や露出などを変更した撮り直しの方法も提案する。
Custom Edit:ユーザーが任意のテキストプロンプトを入力し、プリセットにない編集内容を指定できる。プロンプトは入力、編集、保存、削除に対応し、音声入力も利用できる。
採用技術と課題
画像生成・編集モデルにはGoogleの「Nano Banana」を採用している。今後、Adobe Fireflyを含む複数モデルを試していく可能性があるという。画像生成処理はクラウドで行われるため、利用にはWi-Fiまたはモバイル通信が必要である。生成画像は通信時間と処理時間を抑えるため、一辺約2000ピクセルとなる。
Indigoの撮影画像はHDR(ハイダイナミックレンジ)形式である一方、現在の主要な生成モデルはSDR(標準ダイナミックレンジ)である。この差を補うため、AdobeはNano Bananaが生成したSDR画像を後処理し、HDR表示向けに補正する独自の機械学習モデルを開発した。補正時には撮影したHDR写真を参照するが、ユーザーの写真をモデルの学習には使用しないという。
開発チームは課題として、生成AIが顔の輪郭や表情などを意図せず変更する「アイデンティティシフト」、プロンプトによる編集の制御しにくさ、クラウド処理による待ち時間や通信環境への依存を挙げている。小型モデルをスマートフォン上で動作させる蒸留技術についても言及しているが、現時点では研究の方向性の一つにとどまっている。
今後の展開
Adobeは実験の結果に応じて提供対象の拡大や追加実験を行い、機能が支持された場合には、将来的に有料版の提供も検討するとしている。



