Microsoftは9月3日(米国時間)、視認できないUnicodeタグ文字を使用した大規模なフィッシングキャンペーンを報告した。このキャンペーンでは「ASCIIスマグリング」と呼ばれる手法が用いられ、1日当たり最大230万件のフィッシングメールが検出された。従来はAIへのプロンプトインジェクションなどで悪用されてきた手法が、メールフィルターの回避に利用されたという。
ASCIIスマグリングの仕組みと攻撃の推移
ASCIIスマグリングは、通常の画面では表示されないUnicodeのタグ文字をテキスト内に埋め込む手法だ。今回使用されたのはUnicodeのタグ領域(U+E0000~U+E007F)の文字で、同領域には通常のASCII文字に対応する不可視の文字が含まれる。具体的には「U+E0041」は「A」を指すが、多くの環境でレンダリングされることはない。
MicrosoftはMicrosoft Defender for Office 365のプロンプトインジェクション対策の一環として、ASCIIスマグリングを検出するロジックを構築。このロジックでは、対象のタグ文字を使用するイングランド、スコットランド、ウェールズの国旗絵文字を検出対象から除外した。
Microsoftは2月9日から6月18日まで、この活動を継続的に追跡した。その結果、本手法を使用するフィッシングメールの件数は、調査開始から2月8日までは数千件規模で推移していたが、翌9日には130万件超に急増した。この活動は平日に集中し、週末にはゼロ件近くまで落ち込む特徴が観察された。
攻撃のピークと正規サービス悪用の実態
攻撃は2月26日にピークを迎え、3月中旬ごろまで平日1日当たり120万~237万件規模が継続した。その後は減少に転じ、5月15日以降に急減したものの、数千件以下の小規模な活動は継続した。
Microsoftがメールを調べた結果、攻撃者が金融関連のキーワードの途中に不可視のタグ文字を挿入し、単純な文字列検索によるフィルターの回避を図っていたことが判明した。具体的には「funding」を「fun⟨U+E0020⟩ding」に置き換えるケースがみられた。
また、金融関連の単語を組み合わせた使い捨て型の送信ドメインが多数使われ、検知シグネチャーの対象となったメールの約96%を占めた。これらはメールマーケティングサービス企業「ActiveCampaign」のインフラを経由して送信され、同サービスのクリック追跡用ドメインも利用されていた。
対策と推奨事項
Microsoftは調査結果をActiveCampaignに通知し、対策に向けて連携した。ActiveCampaignは、不可視のUnicode文字を使用したメールについても検出できると説明し、AIや機械学習を含む不正利用の検出・防止機能を継続的に強化する方針を示した。
Microsoftはメールサービスを提供する企業に対し、不正利用の検出および防止対策の強化を提案。ASCIIスマグリングを含む不可視または非表示のUnicode文字を除去または正規化し、その後に件名や本文に対するキーワード、シグネチャー、正規表現による判定を実施するように推奨した。
また、タグ領域の文字そのものを異常の兆候として扱い、金融関連ドメイン、送信元インフラ、URL、送信量など複数の情報を組み合わせて判定する方法も有効としている。なお、Microsoft Defender for Office 365では、メールの内容を画像として捉え、OCRで可視テキストを抽出して解析することが可能だ。
このほか送信者やIPアドレス、URL、ドメインのレピュテーション、機械学習によるスパム・フィッシング分類など多層的な対策を実施しており、今回のメールの99%以上はタグ文字の直接検出に依存しない仕組みによって検出されたという。



