今年限りで休部する社会人野球・パナソニック(大阪府門真市)のエース柿本晟弥(せいや)投手(24)が、22日のプロ野球ドラフト(新人選手選択)会議で西武から2位指名を受けた。1950年創部の名門から休部前最後のプロ入りとなる柿本投手は「僕が活躍することで、パナソニックの名前を少しでも長く残したい」と誓う。
苦難続きの野球人生
兵庫県赤穂市出身。最速151キロの直球と多彩な変化球を操る右腕の野球人生は、苦難の連続だった。兵庫・東洋大姫路高では3年時の夏の甲子園大会がコロナ禍で中止に。東洋大4年時には同学年の2人が指名される中、指名漏れを経験した。
通算1065盗塁のプロ野球記録を持つ福本豊さん(78)(元阪急)ら多くのプロ選手を輩出してきたパナソニックに進んで成長を期したが、昨年12月、近年の成績低迷と会社の経営改革を理由に休部を告げられた。
前向きに切り替え、成長
幼い頃から「落ち込むという感情がない」というポジティブな性格。「(チームの名前を残すため)プロに行かないといけない理由が一つ増えた」とすぐに切り替えた。阪神などで活躍し、チームの総合コーチを務める鳥谷敬さん(45)からは野手目線の助言も受けながら、フォームを修正。捕手任せだった配球や相手の分析を勉強し直し、直球の威力や投球の安定感が増した。
社会人野球の2大タイトルの一つで本拠地の都市を代表して戦う今夏の都市対抗では、予選敗退チームから選ばれる補強選手として、NTT西日本の準優勝に貢献。休部前最後の大会となる日本選手権(今月31日開幕、京セラドーム大阪)は、近畿地区最終予選を勝ち抜き、44度目の出場をつかんだ。
ドラフト会議で安堵、日本選手権へ
ひたむきな姿に、パナソニックの井上貴晴監督(35)は「気持ちが強く、常に前向き。周りにも積極的に声を掛け、気配りができる投手」とたたえる。
22日のドラフト会議。大阪府枚方市の練習場でテレビ中継を見守った柿本投手は、自らの名前が呼ばれると「ホッとした。思ったより上位の指名でびっくり」と安堵の表情を浮かべた。入部2年目でついに指名を受け、「1年目の目標は新人王。いずれは日の丸を背負えるような投手になって、パナソニックに恩返しがしたい」。日本選手権では、感謝を込めてマウンドに立つ。
パナソニックの歴史と現状
パナソニックは1950年に松下電器産業(当時)の軟式野球部として発足し、52年に硬式となった。都市対抗は57度出場、日本選手権は史上最多44度の出場と2度の優勝を誇る強豪だ。OBには福本さんのほか、速球派投手の山口高志さん(76)や、救援投手として西武の黄金期を支えた潮崎哲也さん(57)らがいる。
近年、若手人材確保などに役立つとして日本野球連盟の企業チームは増加傾向にあり、今年度のチーム数は101と10年で12増となっている。一方で、パナソニックのように企業の業績に左右されて休部や廃部となるケースも少なくない。