今季限りで現役を引退する松江市出身のプロテニスプレーヤー、錦織圭選手(36)。過酷な練習や逆境を乗り越え、世界で活躍してきた原動力は、常人にはない「負けず嫌い」の性格だ。現役最後の公式戦となった10月1日のツアー大会「ジャパンオープン」(東京)では、世界ランク8位の選手と互角に渡り合い、4―6、4―6で敗れたものの、元世界ランク4位の矜持を見せた。
「負けず嫌いがなくならなくてよかった」
試合後のインタビューで錦織選手は「最後まで、この“負けず嫌い”がなくならなくてよかった」と語った。度重なるけがを乗り越え、第一線で戦い続けた姿に、多くのファンが感銘を受けた。
親友が明かす「勝負強さ」の秘密
錦織選手と親交が深い米国在住の佐藤悠史さん(38)は、米フロリダ州にあるスポーツ名門校「IMGアカデミー」テニス部門ヘッドコーチを務める。公私にわたり15年以上の付き合いがあるといい、「ボードゲームでも負けず嫌いは同じ。ここぞという場面では本当に勝負強い」と語る。
以前、ゴルフに出かけた際、錦織選手がパー3のショートコースでニアピン勝負を挑んできたことがあった。その日は調子が悪かったというのに、「ピタッとピンに寄せてきたんですよ、信じられないような正確なショットで」と、軍配は錦織選手に上がったという。
恩師が語る「本当の負けず嫌い」
錦織選手が5歳から13歳で渡米するまで指導した松江市の「グリーンテニススクール」ヘッドコーチ、細木秀樹さん(51)も、負けず嫌いな錦織少年の挑戦を受け続けてきた。同世代の試合では敗戦を知らなかった錦織少年も、当時20歳代の細木さんには歯が立たなかったが、それでも本気で負かそうと何度も試合を挑んできたという。
細木さんは「圭にとって相手は関係ない。負けた事実だけが、自分を突き動かすエネルギーで、どんなにつらく、苦しくても勝つための工夫や努力を惜しまない。本当の負けず嫌いですね」と振り返る。
2014年の全米オープンで準優勝した頃、錦織選手があるインタビューで「もう、勝てない相手はいないです」と語った言葉が、細木さんの心に突き刺さったという。「負けず嫌いの圭が、そう言えるまでになるには、どれほどの努力や工夫を重ねたことか。生半可じゃなかったはずです」と語る。
一つの壁を越えれば、次の壁を越えるために敗戦の悔しさを成長のエネルギーに変えて練習に励む。ごまかしの利かない世界を生き抜いてきた錦織選手は、ラケットを置くその日まで、「負けず嫌い」で居続けるに違いない。