愛知・名古屋アジア大会で、選手への誹謗中傷がSNS上で相次いでいる。スポーツの最大の敵はドーピングと戦争とされるが、誹謗中傷も選手の心や競技の価値を深く傷つけている。大会では選手への敬意を欠いた言葉が目立ち、不快の念を催すことが少なくない。
バレーボール女子代表への誹謗中傷
銀メダルを獲得したバレーボール女子日本代表には、容姿にからめて結果を侮辱する投稿が選手のSNSなどに寄せられた。日本バレーボール協会は「選手に向けられた言葉は、画面の向こうにいる一人の人間に届いている」と、誹謗中傷を控えるよう求める声明を発表した。
一部の心ない投稿は、ねぎらいを伝える多くのメッセージにも増して強い打撃を選手に与える。容易に想像がつくことだ。選手らが声を上げなければならない状況に追い込んだことは、開催国として恥ずかしい。
JOCの監視と削除要請
日本オリンピック委員会(JOC)は名古屋市内にオフィスを開設し、弁護士らが悪質な投稿などを監視している。削除要請は25日時点で274件に上った。その労力や費用は本来、競技環境の整備に向けられるべきもので、誹謗中傷は社会の活力も奪っているに等しい。
「#言葉に6秒深呼吸」は、JOCなどがSNS利用者に向けて掲げた標語だ。投稿前に内容を冷静に確かめる時間を持とうという呼びかけで、一人一人がぜひ実践してほしい。
選手への敬意と応援の文化
今大会は、組織委員会による運営の不手際も目立つ。選手たちはその中でも熱戦を繰り広げ、大会の価値を守り続けている。選手への侮辱は、その家族や指導者ら、さらには大会を支えるボランティアらまで辱めることに気づくべきだ。
日本のスポーツ界は今年春から、選手への誹謗中傷を応援に変える「RESPECTion!(リスペクション)」プロジェクトを展開している。選手への敬意を行動に移し、応援の文化を社会全体に広げていく取り組みだ。
プロジェクトの共同代表を務める青山学院大陸上競技部長距離ブロックの原晋監督は、「選手は99・9%がプロセスなんです」と語る。本番に向けて舞台裏で積み重ねてきた鍛錬の日々にも、思いをはせてほしいとの問いかけは重い。
相手への敬意を忘れず、投稿する前に一度立ち止まる。難しいことではない。大会終盤も、選手に熱い声援を届けたい。