なぜ2026年W杯は米国・カナダ・メキシコの3カ国共催なのか…汚職事件後の民主的選考とアメリカの思惑
2026年W杯3カ国共催の背景…汚職後民主的選考と米国の思惑

2026年に開催されるFIFAワールドカップは、アメリカ、カナダ、メキシコの3カ国による史上初の共同開催となる。この決定に至った経緯には、FIFAを揺るがした大規模な汚職事件と、その後の開催地選考プロセスの根本的な改革が深く関わっている。本記事では、スポーツライター木崎伸也氏の著書『サッカーと地政学 ゴールの先に世界が見える』(ワニブックス)の内容をもとに、2026年W杯招致の舞台裏と国際政治の力学を解説する。

FIFA汚職事件が変えた開催地選考のルール

2010年南アフリカW杯の招致では、FIFAのワーナー元副会長ら3人が南アフリカ側から約12億円の賄賂を受け取っていた。さらに、2018年ロシアW杯と2022年カタールW杯の招致をめぐっては、2015年にアメリカ政府の調査により、マーケティング会社からFIFA理事らへの賄賂が発覚。14人がアメリカで起訴される歴史的な汚職事件に発展した。このスキャンダルを受け、FIFAは開催地選定の方式を大きく見直した。

従来はFIFA理事24名の投票で開催地を決めていたが、2026年W杯の選考から、すべての加盟協会が投票権を持つ「1国1票」制度に変更。さらに透明性を高めるため、各協会がどの国に投票したかも公表されることになった。つまり、2026年W杯は初めて“民主的”な選考によって選ばれた歴史的な大会なのである。

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2026年W杯招致レースの構図

2026年W杯招致に立候補したのは、3カ国共同招致のアメリカ・カナダ・メキシコと、単独招致のモロッコの2陣営のみだった。「開催地となった大陸はその後2大会の立候補ができない」というルールのため、ヨーロッパとアジアは立候補できず、南米とオセアニアも手を挙げなかった。結果、北中米カリブ海地域とアフリカ大陸の一騎打ちとなった。

アメリカは当初、単独での開催を計画していたが、FIFAの制度改革や地政学的な理由から、カナダ・メキシコとの共催に方針転換した。これにより、3カ国は広大な地域と既存のスタジアムインフラを活用できる強みをアピールした。

アメリカの思惑と地政学的背景

アメリカにとってW杯開催は、単なるスポーツイベントではない。国家のイメージ向上と国力を誇示する絶好の機会だ。FIFAの加盟協会数(211)は国連加盟国(193)を上回り、W杯の視聴者数は世界人口の60%を超える。アメリカはこの舞台を通じて、国際社会における自国のリーダーシップを強調したい考えだ。

また、メキシコとカナダとの共催は、北米地域の結束を強化する狙いもある。特にメキシコとの国境問題を抱えるアメリカにとって、サッカーを通じた協力関係の構築は外交上のメリットが大きい。

モロッコ単独招致の挑戦と敗因

対抗馬のモロッコは、アフリカ大陸として2度目のW杯開催を目指した。しかし、インフラ面や財政面での不安が指摘され、投票では3カ国共同招致に敗れた。モロッコの招致は、アフリカサッカー界の悲願でもあったが、北米陣営の経済力と政治的な影響力に及ばなかった。

W杯と地政学の密接な関係

本書『サッカーと地政学』は、W杯が地政学や国際関係の縮図であると指摘する。選手のプレーや監督の采配だけでなく、招致をめぐる各国の争い、国際政治、移民政策などが複雑に絡み合っている。2026年W杯の3カ国共催は、その象徴的な事例といえる。

著者の木崎伸也氏は、2002年にスポーツ紙の通信員としてオランダへ移住。2003年からドイツを拠点とし、2009年に帰国。現在は『Number』『BRODY』『footballista』などに寄稿するスポーツライターである。

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まとめ:民主的選考がもたらした新たな時代

2026年W杯は、FIFAの汚職スキャンダルを経て、より透明性の高いプロセスで選ばれた初めての大会となる。アメリカ・カナダ・メキシコの3カ国共催は、サッカーと地政学が交差する複雑な背景を持つ。この大会が、開催国だけでなく、世界のサッカー界にどのような影響を与えるのか注目される。