愛知・名古屋アジア大会(読売新聞社協賛)は29日、今大会で初めて採用されたサーフィンの決勝で、男子は五十嵐カノア、女子は池田美来が優勝した。それぞれ条件付きで2028年ロサンゼルス五輪の出場資格を獲得した。陸上の男子800メートルでは、落合晃(駒大)が1分44秒48の大会新記録で金メダルを獲得し、男子1600メートルリレーは日本が制した。
初代王者に輝く
決勝で、男子は五十嵐がインドネシア選手を破り、初代王者に輝いた。女子は池田が中国選手に勝って金メダルを獲得。準決勝で敗れて3位決定戦に回った野中美波は銅メダルを手にした。
銀メダルに輝いた東京五輪、9位に終わったパリ五輪に続く、3度目の大舞台となるロサンゼルス五輪がくっきりと見えた。「五輪はすごく特別なイベント。日本のために金メダルを取りたい。そこに近づくことができて本当にうれしい」。アジア王者の座をつかんだ五十嵐は、感無量の様子で言葉を紡いだ。
「めったに出ない」10点満点
準決勝では、波から空中に高く飛び出してボードをつかみながら回転する大技を繰り出し、自身も「めったに出ないスコア」と驚く10点満点をマーク。自信を深め、決勝でも開始直後に同じ技に挑んだ。波が小さかった分、スコアは低くなったが、相手に重圧をかけるには十分だった。
「3年前だったら、10回に1回しか成功できなかった。そこからすごい練習をして、10回に6回くらいになった」という大技。スタイリッシュに見える日本のトップランナーの裏側には、想像もできないほどの努力の積み重ねがある。
米カリフォルニア州生まれで、幼少期からサーフィンに親しんできた。2年後の五輪開催地は、いわば「ホーム」。「東京五輪の時もホームの感じがした。またホームで大きなイベントに参加できることに、感謝の気持ち」とうれしそうに語る。
条件付きとはいえ、早期に代表権を手にした利点は大きい。「準備がシンプルになる。今日、五輪の金メダルに近づいた」。その言葉にうそはなさそうだ。
池田美来、飛躍の「金」
金メダルの重みを問われると、18歳の池田は「達成してみると案外そうでもない。もう自分の頭はロサンゼルス五輪に向いている部分がある」と答えた。大会を制した喜びより、その先に待つであろう戦いへの覚悟がにじんでいた。
肩書はこの春からプロサーファーとなった。「練習に取り組める時間が増えた分、仕事という思いもあり、サーフィンに対する責任が伴ってきた」。四六時中、競技のことが頭から離れない。今大会の会場で4度の事前合宿を行い、前日の就寝前には優勝の瞬間をイメージしていた。
準備の成果か、準決勝は制限時間が残り5分を切ってから逆転に成功。決勝では「日本で他国の選手に優勝させたくない。絶対に私がいい波に乗ってやる」と強気の姿勢を貫いた。
世界のトップ選手と渡り合うためには、基礎の技術や試合運びのうまさ、ダイナミックな飛び技など、足りないことがあることも理解している。それでも、「まだまだポテンシャルがあるなと思っている」と堂々と言い切る姿には、さらなる飛躍を期待したくなる。