備蓄米の買い戻し、市場歪めぬ姿勢の徹底を
備蓄米の買い戻し、市場歪めぬ姿勢の徹底を

農林水産省は、「令和のコメ騒動」で放出した政府備蓄米の一部を買い戻すことを決めた。近く、放出先の集荷業者から計21万トン分を買い入れる。政府が放出した備蓄米は59万トンに上り、100万トンが適正とされる備蓄量は現在、32万トンしかない。買い戻しで備蓄水準の回復につなげる狙いは妥当だ。主食の供給不足に備えた食料安全保障の強化に資する。

価格上昇圧力への懸念

ただし、買い戻しで需給が引き締まれば、価格には上昇圧力が加わる。高市早苗政権が重視する物価高対策に逆行しかねないことには留意が必要だ。コメの販売価格は下落が続いており、スーパー店頭では5キロ当たり平均3100円台で推移している。

コメ余りによる今後の大幅下落を懸念する農業関係者は多く、買い戻しで価格に介入しようとする農水省の思惑を疑う声もある。そうであるなら消費者の理解は得られまい。疑念を払拭するためにも、農水省は、価格への影響を注視しつつ、市場の需給を歪めないよう丁寧に買い戻しを進める姿勢に徹すべきだ。

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買い戻しの背景と規模

政府が放出した備蓄米の半分以上は、後に政府が同量のコメを買い入れる条件で全国農業協同組合連合会(JA全農)などに売り渡された。今回の21万トンもこの条件に基づくもので、7年産米を買い入れる。農水省は毎年、備蓄するために20万トン程度を買い入れてきたが、7年産はコメ騒動の影響で中止した。買い戻しはそれに相当する規模である。備蓄米の年産構成を考慮すれば、7年産を買い入れるのは理にかなう。

農水省が買い戻しを決めたのは「コメの供給量が十分に確保されることが確認された」(鈴木憲和農水相)ためである。8年産の生産は需要を大きく上回る見通しだ。9年6月の民間在庫も過去最大が見込まれる。買い戻しに動きやすい環境なのは確かだろう。

21万トンは、8年産米で最大711万トンと見込まれる需要量と比べるとわずかであり、価格への影響はさほど大きくないとも指摘される。鈴木農水相は、市場に影響を与えないよう計画的に買い戻しを進める考えを示している。今後、追加の買い戻しを求める声が強まったときにも、この姿勢を貫くことができるのか。その点が厳しく問われていることを銘記しておく必要がある。

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