8月下旬の記録的大雨で石川県羽咋市の邑知潟周辺では、水田の冠水が続き、住民らが悪臭に悩まされている。冠水はすでに半月を超え、悪臭が長期間に及ぶ可能性もある。
住宅地にも漂う悪臭、園児への影響懸念
邑知潟にかかる邑知潟大橋北側の同市千路町にはJR千路駅があり、住宅も多い。周辺には悪臭が立ちこめており、同町の60歳の女性は「洗濯物を外に干せない。家の中でも臭いがする」と困った様子を見せる。
同町の「とき保育園」の中屋信枝園長によると、園児41人や職員の健康被害は出ていないが、外での散歩は控えており、「(10月上旬予定の)園庭での運動会ができるのか」と懸念している。
原因は有機物の分解、排水進むも北側は冠水続く
水田の土壌環境に詳しい県立大の勝見尚也准教授によると、臭いの主な原因は、水田に流れ込んだ汚泥などの有機物が冠水で酸素がない条件下で分解される際、有機酸や硫化水素を発生させているためと考えられるという。
邑知潟は8月27日の大雨直後には約450ヘクタールの水田が冠水したとみられる。邑知潟に流れ込む川の堤防が決壊したのが原因で、県は堤防の仮復旧や排水を進め、9月10日頃から邑知潟南側の水はほぼ引いてきた。だが14日時点で北側は大規模に冠水したままだ。
専門家は「排水と説明を」、農家は施設復旧を模索
勝見准教授は「臭いがなくなるには水田の水が引いて、土壌に酸素が行き届くようになればいい」と話す。だが水田が乾くのはいつになるか分からず、千路町の住民は「田んぼが乾くには日が照ってほしいが、気温が高くなると臭いがもっときつくなる」と話す。
悪臭物質の処理を研究している立命館大の樋口能士教授は「これほどの規模で悪臭の原因となる水田の冠水が続くのは聞いたことがない」とし、「悪臭発生は様々な条件で変動する。行政は水田の排水や悪臭発生の現状などを住民に頻繁に説明し、健康への影響を把握して、適切に対応を進めてもらいたい」と話す。
邑知潟周辺の稲作農家は、早稲品種の収穫時期に大雨が重なった。計67ヘクタールでコメを栽培する大規模農家の長瀬明さん(50)方では、約40ヘクタールが冠水被害を受けた。その上、刈り取りを終えて育苗施設に保管していたコメ5トン以上が約2週間水に漬かって腐った。施設内はマスクを通しても悪臭が鼻をつく。だが施設は停電と断水が続いており、清掃作業もできない状況だ。
長瀬さんは「来年春に田植えができるよう、育苗施設は優先して復旧させたい。今は待つしかない」と肩を落とした。



