健康診断で肺がんの疑いを指摘され、令和7年1月に右肺のがんと診断された60代後半の女性。上葉と中葉の一部を切除する区域切除手術を受けましたが、術後に転移・再発が判明。今後の薬物療法について、がん研有明病院呼吸器センター長の西尾誠人医師に相談しました。
手術後の経過と転移・再発
病理診断では、腫瘍の大きさは3センチ、組織型は非小細胞肺がんの腺がんでした。術後補助療法として3月から抗がん剤のビノレルビン(商品名ナベルビン)とプラチナ製剤のネダプラチン(アクプラ)を併用で10回投与。8年6月からは抗がん剤のテガフール・ウラシル(UFT)を2年の予定で開始しました。
しかし、1カ月後のPET-CT検査で右胸壁への転移が見つかり、左肺に約1センチの原発の陰影が指摘されました。
主治医の方針と免疫療法の選択
主治医は、手術や放射線療法は肋骨骨折や生活の質の低下を招くため、薬物療法を勧めました。当初は最新の分子標的薬を想定していましたが、適合せず、ニボルマブ(オプジーボ)とイピリムマブ(ヤーボイ)の免疫療法2剤の併用を4回の予定で8月から開始しました。
西尾医師は「転移・再発した場合、他臓器にもがんが発生する可能性が高く、それがどこになるかは分からない。そのため、薬物療法で全身への治療を行います」と説明。「分子標的薬が効かないタイプの場合、次に、化学療法と免疫療法の併用、免疫療法2剤、免疫療法2剤に化学療法、免疫療法1剤のいずれかを検討します。免疫細胞の働きを抑制するタンパク質『PD-L1』の発現が高いタイプのがんの場合は免疫療法1剤となりますが、今回はその発現が低く、効果を高めるため2剤が選択されたのでしょう」と述べました。
治療効果と副作用への注意
治療効果は2回終了後に判定します。西尾医師は「通常その手順です。固形がんの場合、腫瘍の大きさの変化を見て判定します。副作用がなく、効果が見られれば続けます」と説明。効果がない場合は「がんが大きくなっていれば、別の薬を検討します。今回の場合は抗がん剤のドセタキセル(タキソテール)に血管新生阻害薬のラムシルマブ(サイラムザ)を併用する治療が多く行われています」と話しました。
女性は今のところ副作用もなく生活に支障はないといいます。西尾医師は「薬物療法が始まったばかりですし、治療効果は2回終了後のCT検査などによるチェックを受けなければ分かりません。幸い副作用がないのなら、まずはこのまましっかり続けるとよいと思います。ただ免疫療法によって今後、体を守るはずの免疫が自分の細胞や臓器を誤って攻撃してしまう自己免疫疾患という副作用が出る可能性があるので、注意しながら治療を続けることをお勧めします」とアドバイスしました。
左肺の陰影については「他にも出てくることが予想され、今すぐ治療するメリットが少ないため、経過観察となったのでしょう。今ある陰影が増大したタイミングで、他の陰影の出現が見られないときは、手術か放射線療法で治療するのがよいでしょう」と述べています。
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