民事訴訟の証拠開示強化へ改革を 法務省、法制審に諮問へ
民事訴訟の証拠開示強化へ改革を 法務省、法制審に諮問へ

法務省が民事訴訟法の見直しを近く法制審議会に諮問する。法律に権利が記されていても、裁判で実現できなければ意味がない。民事司法の実効性を高めるよう改革すべきだ。

証拠の情報格差が対等な裁判を妨げる

司法は刑事と民事で役割や仕組みが異なる。刑事司法は警察など捜査機関が犯罪を捜査し、証拠を集めて訴追する。国家が人を裁くため、その権限を適切に統制し、誤判を防ぐ制度が不可欠だ。先の再審法改正は刑事司法の信頼性を強める重要施策だった。

一方、民事司法には証拠収集機関はない。当事者が自ら訴え、立証する。しかし現実には証拠となる情報格差があまりに大きく、対等な裁判が成立しにくい。「大企業―消費者」「行政―住民」などといった関係を連想すれば分かりやすい。

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当事者照会の実効性に課題

民訴法には、相手に必要事項を照会し、回答を求める当事者照会制度がある。だが回答しなくても直接の制裁がなく、実効性が乏しい。弁護士会の調査では、当事者照会を利用した107人のうち、51人が無回答・回答拒否を経験した。不十分・虚偽回答との報告も43人からあったという。

裁判を起こす権利はあっても、組織から証拠を得られず立証できなければ、救済には辿り着けない。これが民事司法の現状の問題点である。当事者間の「情報・証拠の偏在」をいかに正すか。

法制審での検討と公益性への配慮

法務省は令和3年から研究会を37回重ね、海外制度も調べた。法制審では、当事者の証拠収集を促進する制度の拡充などが検討対象だ。長年の議論を具体的な制度につなげたい。裁判所が証拠収集に適切に関与し、必要な情報を提出させる制度の強化をためらうべきでない。不開示への制裁も検討すべきだ。

目指すべきは形式的でなく、実質的に対等な裁判だ。証拠開示の強化に際し、営業秘密やプライバシーへの配慮は重要だ。このため証拠の目的外使用制限の議論が出るが、その検討は慎重に行うべきだ。国家賠償請求訴訟に提出された録音・録画が報道され、不当な捜査の実態が明らかになった例もある。公益性の高い証拠の利用まで一律に封じるべきでない。証拠偏在を解消する改革が、新たな秘密の壁を築くようになっては本末転倒である。

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