2019年11月14日午前11時50分、大阪地裁第331号法廷。シンナー所持の罪に問われたヒデキ被告(46)の判決公判で、閉廷の瞬間、被告が突然口を開いた。「お世話になった方々にあいさつしていいですか」。裁判官は驚きつつ、「前を向いたまま」を条件に認めた。
支援者への謝罪と一礼
ヒデキ被告は「西田のお母ちゃん、メダデの兄貴たち。迷惑かけて、すみませんでした」と声を響かせ、深々と一礼。腰縄をつけられ法廷の出口に引っ張られていった。そこで西田さんの方を振り返り、かすかに笑みを浮かべた。これまでに見せたことのない柔和な表情だった。西田さんはヒデキ被告を見つめ返し、何度もうなずいた。
この日、傍聴席には西田好子牧師(69)以下、メダデ教会の信徒が座り、あたかも礼拝堂のようだった。裁判官は「被告人を懲役1年4か月に処する」と主文を読み上げ、「支援者(西田)の存在も踏まえた量刑である」と説明。「自分を見つめ直し、周りの支援で、もう犯罪はしないように」と諭した。
夢で見た笑顔と同じ表情
法廷を後にした西田さんの目は赤かった。数日前、就寝中に見た夢で、出所して心を入れ替えたヒデキ被告におんぶされ、2人して野宿者たちに「うちの教会に来うへんか」と声をかけている光景があった。ヒデキ被告が見せた笑みは、その夢の中の表情と同じだったという。
西田さんは裁判所の近く、中之島の川沿いに信徒を集め、その場で説教を始めた。「ヒデキの笑顔を忘れるなよ。毎日祈ってやれ。あの子が今日の気持ちを忘れんように」。そして「アメイジング・グレイス」の旋律に乗せて歌い始めた。信徒たちも続き、少し調子の外れた歌声が川辺に広がった。西田さんは「ヒデキはどうしょうもない奴やけど、メダデはこれから、あの子と一緒に前進するんや」と語った。
メダデの面々は再びがやがやと地下鉄に乗り込み、西成に戻っていった。



