「私、褒めるのが下手で…」と悩むお母さんほど、実は「声かけ」で子どもの行動を効果的に変えられる可能性がある。発達科学コミュニケーション代表で学術博士の吉野加容子氏は、褒め方のテクニックよりも、短い肯定や失敗を受け入れる姿勢が子どもの脳に新しい回路をつくると指摘する。
「できたこと」に注目する声かけが脳を育てる
吉野氏によると、子育てで重要なのは、子どもの「できたこと」に注目し、短く肯定することだという。「おはよう」と笑顔で言う、できたことを一言褒める、失敗しても「大丈夫」と伝える――こうした何気ないひと言の繰り返しが、子どもの脳の回路を育てていく。脳の変化は一夜で起きるものではなく、筋トレのようにコツコツと積み重ねる必要があるが、無理なく楽しみながら続けられるのが声かけトレーニングの特徴だ。
実際に変わった子どもたちのエピソード
吉野氏はこれまで多くの親子の変化を見てきた。例えば、ひと言もしゃべらなかった子がおしゃべりになったケースや、BB弾で母親を撃っていた子が大学に進学し、優しくて面白い青年に成長した例がある。また、暴力的で友達が一人もいなかった子が、ある趣味に没頭し、その趣味を通じて友達に囲まれるようになった。その子の母親は「趣味に没頭して目をキラキラさせている姿を見ると、あのとき頑張って本当によかった」と語ったという。
変化には時間がかかるが、手応えは早い場合も
吉野氏は、変化がスムーズに進むわけではないと強調する。毎日うまくいかず、母親が怒ってしまう日も、子どもが荒れる日もあった。「本当に変わるのかな」と不安になる日もあったが、それでも「できたことに注目する」「短く肯定する」「失敗しても戻ってこられる場所をつくる」を積み重ねることで、子どもの脳に新しい回路が形成されていった。早い家庭では2~3週間で変化の手応えを感じることもあり、3~4カ月続けるうちに「あれ、この子、変わってきたな」と実感する母親も多いという。
声かけは家庭でできるシンプルな「脳育て」
「人を育て、脳を育てるのは、下心のない、成長の感動です」と吉野氏は語る。褒めるのが下手だと感じる母親ほど、テクニックに頼らず、日常の声かけを意識することで、子どもの行動は変わり始める。声かけのトレーニングは、家庭でできる非常にシンプルな「脳育て」の方法であり、特別なスキルは必要ない。



