フジテレビ声明への批判:マッチポンプの構図
週刊文春が報じた俳優・佐藤二朗のハラスメント疑惑をめぐり、フジテレビが声明を発表した。声明では「関係者のプライバシー侵害や二次被害につながるおそれが高いものと考え、掲載中止を強く申し入れましたが、それにもかかわらず記事の掲載に至ったことは大変遺憾」と述べている。しかし、この声明には強い違和感が指摘されている。
高リスクな情報を文春に提供したのは、フジテレビ内部の人間である可能性が高い。内部の情報が外部に漏れるのは、組織内の内紛や混乱が背景にある。経済ジャーナリストの浦上早苗氏(法政大学MBA兼任教員)は、「内部の人間がリークした情報に対して『遺憾』と表現するのは、もはやマッチポンプ感がある」と指摘する。
内部リークのメカニズム:愚痴から端緒へ
組織の内紛やごたごたは、内部では周知の事実であることが多い。それが報道されるのは、関係者による積極的な情報提供の場合もあるが、大半は飲み会や雑談での愚痴が外部に漏れ、記者や編集部に伝わるパターンだ。浦上氏によれば、記者や編集部はこれを「端緒」と呼び、信頼性を担保できない情報の「断片」として扱う。メディアが追う価値があると判断すれば、より精度の高い情報を得るために取材を開始する。いわば「裏取り」である。組織のごたごたの場合、責任者に近い人物を含む複数の関係者から話を聞き出して、ようやく全体像が見えてくる。
テレビ局と週刊誌の地続きな関係
マスコミの不祥事やトラブルは、週刊誌の耳に入りやすい環境が整っている。まず、同じ業界で「地続き」であるため、人の交流が多い。次に、マスコミにはおしゃべりな人が多い。情報を商材として扱う業界だからか、自分の持っている情報と欲しい情報を交換する「情報交換」が日常的に行われており、相手が魅力的な情報を持っていると判断すれば、センシティブな情報も差し出しがちだ。
さらに、テレビ局の内紛や不祥事は、しばしば著名人が絡み、読者の関心が高いため狙われやすい。浦上氏は過去の事例を挙げ、「あるテレビ局でハラスメントが週刊誌に報じられた後、1年ほど経って同局の知人が『あの後もわが社って何も変わってないよ。文春また書いてくれないかなあ』と愚痴をこぼした。それから数カ月後、本当に文春砲になった」と語る。知人は「自分は何も話してないけど、前回の不祥事の取材でコネクションができているし、文春が報道して問題の人物を飛ばしてほしいと考える人は結構いるよ」と説明したという。
このように、内部リークは組織の改革や問題解決を期待する関係者の思惑と、メディアのスクープ欲求が合致した結果と言える。フジテレビの声明が「遺憾」と表現する一方で、実際には内部の情報提供者が存在するという構図は、組織のガバナンスや情報管理の難しさを浮き彫りにしている。



