東大寺学園中・高等学校(奈良市)は今年度、創立100周年を迎え、5月27日に記念式典が奈良市の多目的ホール「なら100年会館」で執り行われた。式典は2部構成で、開式の辞とともに、会場正面のスクリーンに100周年記念映像として、東大寺から校舎までのドローン撮影やAI技術でカラー化されたモノクロの旧校舎や歴代校長の写真などの映像が流れた。
式典で「自由」の精神を強調
本郷泰弘校長は登壇し、「創立以来、本校が大切にしてきたものがあります。それは『自由』の精神です。この100年、本校は自由な校風のもとで、生徒一人一人の個性を尊重し、自主性を育てることを教育の中心に据えてきました。生徒諸君は失敗を恐れず、自分らしく挑戦してください。本校で学ぶ一人一人の個性と行動が、次の100年の学園をつくっていきます」と式辞を述べた。
続いて、北河原公敬理事長のあいさつや、来賓の山下真・奈良県知事(西村高則副知事代読)、橋村公英・華厳宗管長東大寺別当らの祝辞があった。休憩を挟んだ第2部では、和太鼓同好会と室内楽部の生徒たちが演奏を披露し、校歌斉唱を行って式を閉じた。
「自由」の本質を語る校長
式典後、本郷校長は100周年の区切りについての受け止め方を語った。まず心にかけていたのは「来賓中心ではなく、全校生徒とともに祝いたい」ということで、式典は在校生全員が参加する形式にした。式辞の前には生徒たちに「心を込めて君たちへのメッセージを贈るからちゃんと聞いてくれる?」と呼びかけたという。
本郷校長は、卒業生からのメッセージを通じて「本校が守り続けてきたことは、時代を経ても何一つ変わっていないことを再認識しました」と述べ、「伝統に根差した『自由』の本質は脈々と受け継がれている。それを、これからも発信していきたい」と決意を新たにした。
また、「自由」の精神について、「自由とは単なる楽しさだけではありません。『自分で考え、判断し、選択し、行動し、その結果に責任を持つ』という厳しさを伴うものです」と説明。文化祭では「好きにやってごらん」と生徒に任せているといい、「しんどくて不安や葛藤もあるだろうけど、頑張ったら達成感と自己肯定感が得られる」という経験を生徒に与える姿勢でいるという。
自主性を育てる教育の核
本郷校長は、6年間で「自分は何が好きで、何が得意か」を発見し、「何者になれるか」へ想像をつなぐことが大事だと語る。授業や行事、部活、同好会活動を通じて気付きの機会を多様に用意しているといい、「君、変わっているなあ」が褒め言葉として受け入れられる文化があると述べた。
「本校の教育の核は『個性を潰さない』『独創性・創造性に磨きをかける』ことです。『生徒が10人いたら10人とも違う』という前提で過去から学びつつ、プラスアルファの創造を目指しています」とし、「正解に至る勉強」ではなく「新たなものを見つけ出す発想」こそが必要だと強調した。
次の100年に向けては、「100年は新たな出発点であり、自由、自主性、創造性など今持っている強みにさらに磨きをかけていきたい」とし、方法は時代に適応させて柔軟に更新しつつ、生徒の創造性を磨くという不変の核を次の100年へ継承、発展させていく方針を示した。
生徒たちの演奏と自主性
記念式典の第2部で演奏を披露した和太鼓同好会部長の大野陽菜太君(高2)と、室内楽部部長の奥野誠也君(同)も取材に応じた。大野君は「代々受け継がれている『導火線』と、高校3年の先輩が前年度に創作された『爛』の2曲を、中学3年から高校2年までの10人で演奏しました。花火をイメージした『爛』は100周年を祝うのにふさわしい華やかな曲です」と話した。
奥野君は「カルメン組曲の『トレアドール』などクラシックを3曲、中学1年から高校3年までの現役部員とOBの総勢40人で演奏しました。準備期間は短かったのですが、何度も相談を重ねて『フィガロの結婚』にも初めて挑戦しました」と語った。
大野君は「校則がないため、善悪の判断や守るべきラインは生徒一人一人が自分で考えて行動することが求められます。『自由』とは何をしてもよいのではなく、学園生活を通じてその本質を身に付けていくことが重要だと考えています」と述べた。奥野君も「式典の選曲は生徒に任されており、技術や式典の趣旨、準備期間など複数の要素を考慮して自分たちで決めました。自分で考え、責任を持って実行する経験は、失敗も含めて多くを学べる貴重な機会だと思います」と話し、このような経験を後輩たちにも受け継いでいきたいと語った。



