利晶学園大阪立命館中学校・高等学校(堺市)のUS(ユニバーサル・スタディ)コース1期生が6月、10週間のオーストラリアターム留学を終えて帰国した。同コースは、高い英語力と主体的な探究学習によって世界基準の国際教育を目指しており、原則的に全員参加するこのターム留学は、中学の学びの最大の節目になっている。英語科教諭と帰国した1期生2人に、現地での学びや成果などを聞いた。
国際教育と探究学習を融合させた学びが特徴
「USコース」は2024年度、中高一貫の国際系コースとして新設された。英語教育を中心とする国際教育と、主体的な学びの姿勢を習得する探究学習を融合させた学びが特徴で、コース生の進学先には海外大学も視野に入れている。英語科の田中一代教諭は、「中学という時代に、まずは人間としての基礎を身に付け、その上で英語力の習得、文化の探究を展開しています」と語る。
通常の授業では、実技系の教科(音楽、体育、技術、美術、家庭科)を日本人とネイティブの教員がチームティーチングで担当し、英語で授業を行う。英語を除く主要教科は、中学段階では日本人教員が日本語で授業を行っている。英語はAとBの2種類に分かれており、田中教諭が担当するAは、各自ヘッドホンを装着し、オンライン教材を用いて4技能(書く・読む・聞く・話す)をそれぞれのレベルに合わせて学ぶ個別最適化学習となっている。
イギリス出身のリヨン・レイツ教諭が担当するBは、習熟度別にクラス編成され、設定されたテーマについて学びを深めるプロジェクト型授業となっている。レイツ教諭は「生徒が挑戦する環境作りが大切ですので、英語でのコミュニケーションを基本としています。互いに学び合い、応援する姿勢も大事。プロジェクト授業を通して協調性を育てています」と語る。
オーストラリアでの生活体験を通して得た学びと成果
英語を重視した特色ある授業のほかに、同コースの最大の特徴となるのが、中3の1学期に原則全員参加で行われる10週間のオーストラリアターム留学だ。西オーストラリア州の州都パースと近郊都市のバッセルトンでホームステイしながら、現地の私立校に通う。高い英語運用能力の獲得を目指しているため、ホームステイは1家庭に生徒1人、学校も現地生と同じクラスで学ぶことになっている。また、原住民や移民との共生社会であるオーストラリアで生活することにより、多様性を理解し、国際感覚を高める狙いもある。
今回の留学には16人が参加した。4月19日に出国した生徒たちは、パース空港に到着後、パース市内やバッセルトンに向かってホストファミリーと合流し、翌日からモロイ・アングリカン・スクールや、セント・スティーブンズ・カレッジなど3校に分散して現地の第2学期の授業に参加。学期終了後の6月28日に帰国した。
父がオーストラリア人のストリーター英美さんは、留学中、青少年のSNS使用が厳しく制限されていることに驚いたという。「日本のように自由にSNSが使えないので、最初は暇を持て余しましたが、それによってホストファミリーと話す時間が増えたので相互理解が深まりました」 ストリーターさんは、学校生活にも早い時期からなじめたという。「3人のバディが一緒に行動してくれたおかげで、広い校内でも迷うことなく、専門用語が難しい授業内容についても相談に乗ってもらえました」
岡田一武輝君は、オーストラリアでは、水が大変貴重だということに強い印象を受けた。「乾燥している地域ということで水の使用に対してはかなりシビアでした。最初は戸惑いましたが、シャワーを短時間で済ますように心がけました」 岡田君は初めのうち、苦労の連続だったという。ホストファミリーとはうまく会話できず、学校でも、特に社会の授業が日本との制度や情勢の違いなどから、内容を理解するのに苦労した。「授業はすべて英語で行われます。ホストファミリーとの会話もナチュラルスピードのうえ、日本で学んでいる英語とはアクセントが異なります。スラングも混じっていますし、分からない単語が出てくる度に調べて、何とか乗り越える毎日でした」 しかし、5週間が過ぎた頃、変化が起きた。「現地の人々のアクセントやスラングに耳が慣れてきました。同時に、それまでは耳から入った英語を脳内で日本語に変換して考えてから英語で話していましたが、日本語を介さずに英語でアウトプットできるようになりました。うれしい変化でした」
事前学習や短期留学でターム留学に備える
今回、留学に参加した生徒たちは事前学習として、中2で台湾の公立学校とのオンライン交流を行っている。クラス単位での交流で、互いの文化を紹介し合うなどして早期に異文化に触れる経験を積んだ。また、ターム留学前には海外大学へのスカウト制度で重要視されるIELTSを受検し、帰国後も成長を評価するために再度受検する。長期留学への「予行演習」として短期留学に挑戦する生徒も少なくなかった。ストリーターさんは昨年の夏休みに約2週間、学校の選択制プログラムでニュージーランドの現地校に留学し、ホームステイを体験している。岡田君も昨年の夏休み、約1か月間、カナダの現地学校のサマープログラムに参加した。今年3月には、シンガポールで開催された模擬国連に自費で参加し、マレーシア代表としてディベート方式のディスカッションに挑んだそうだ。
教科の授業や事前学習、自主的な短期留学など、2年余りの準備をして臨んだオーストラリアターム留学は、生徒たちに大きな影響を与えたようだ。ストリーターさんも岡田君も現在、高校卒業後は海外の大学への進学を希望しているそうだ。「ターム留学後は生徒たちに主体性が芽生え、大人っぽくなりましたね」とレイツ教諭は話す。田中教諭も「言語は感情が乗って初めて自分のものになります。生徒たちはターム留学から帰国後、自分の感情を英語で詳細に語れるようになったように感じます」と成長を実感していた。
生徒たちは今回、中学での大きな節目を越えたが、USコースの学びは、まだこれから3年半残っている。「USコースの生徒は他コースの生徒とは異なり、リスニングとスピーキングが先行して伸び、後から文法理解が追い付いてくる傾向があります。今後、生徒の進路実現のために、そうした面も下支えしていきたい」と田中教諭は展望を語った。