同性婚訴訟の最高裁大法廷での統一判断が示される可能性を前に、企業の動きが慌ただしくなっている。社員の福利厚生や顧客向けの申込書など、これまで「男女」で作られていたルールが変わり始めた。
札幌市の社会福祉法人「札幌恵友会」は7月、就業規則の配偶者を「異性であるか同性であるかを問わず、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」と変更し、労働基準監督署に届け出た。申請の際には、独自の誓約書や、都道府県が発行するパートナーシップ宣誓書、独身証明書のいずれかを提出する仕組みとした。新規則は全395人の職員に周知され、4月1日から施行されている。
労組の提案がきっかけに
職員らでつくる「札幌地域労働組合恵友会支部」の組合員たちが提案し、春闘で法人に要求して認められた。法人が運営する特養老人ホームの施設長は「もっと早く取り組んでもよかった。受けられていたはずの恩恵を、受けられていない人がいたかもしれない」と振り返る。
また「性別や宗教、国籍を区別せず、一人一人の幸せを考えるのが福祉。人材不足の進むなか、多様な人材にとって働きやすい環境には優秀な人材が集まる。利用者の幸せにもつながるはず」と期待する。別の職員は「どうしたらいいのか分からない法人もあると思う。前例を示していきたい。小さな変化が続けば、法律も変わるんじゃないかな」と話す。
最高裁大法廷で審理へ
民法や戸籍法の規定が「同性婚」を認めていないのは憲法違反だとして、同性カップルらが国を訴えた裁判は、各地で「違憲」との判断が出され、最高裁の大法廷で審理されることが決まっている。大法廷での審理は、新たな憲法判断を示す場合などに限られ、違憲との結論になれば国は婚姻制度の見直しを迫られる。早ければ2026年度中に統一判断が示されることになる。
性的マイノリティーの権利を守る活動をしているNPO法人「虹色ダイバーシティ」(大阪)が、LGBTQとその周囲の人ら6838人に実施した24年のアンケートでは、「福利厚生での同性パートナーの配偶者扱い」を希望する人が65%いた。また、職場でLGBTQ施策の対応がされていないとの回答は53%にのぼった。
一方、同性婚の法制化に賛成するかどうかを巡っては、今後も議論が続くとみられる。



